コストと表現技法
「『ペーパーレス作画の現状と未来予測』寄せられた質問」というアニメ業界向けのフォーラムの記事を読んでて、少々奇妙に思ったのが、「カットあたりの制作コスト」と「新しい表現技法」に関する質問がほとんど見当たらなかった点です。かなり扱いが小さく、そのほとんどは「現制作技法の移行」に関する事で占められていますね。
私が最重要視しているのが、まさに新しい「表現技法」と「制作コスト」の2つなので、‥‥なるほど、今の「デジタル作画」の話題とどうも噛み合わないは、致し方ない事か‥‥と感じた次第です。私にとって「制作コスト」と「表現技法」は、まさに「作って売る」ための主軸なので、そこを抜きに未来の展望を論じても、接点は発生しないわけです。
業界の人々が、今の制作システムを「デジタル化」した結果、好転なり改善する‥‥とホントに考えているのか、とても疑問に思うのです。「4Kでオールデジタルなら、何か良い未来が待っている」と思い込もうとしているようにすら、見えます。
私はアニメ業界とは違うやり方で「4Kのアニメ」を作ろうと研究していますが、研究すればするほど、困難にブチあたります。「技術開発レベル」の取り組みでは瑣末な技術見本市に終始してしまい、「今までの思考では、戦いには勝てない事」がひしひしと実感できます。根本的なバトルドクトリンの変革が必要なのです。
技術屋の殻を破り、技術とビジネスを結びつける、またとない機運なのです。4K8Kの新しいアニメーション映像技法は、困難もリスクも伴いますが、従来のアニメとは違う表現手法も数多く導入できるので、「ピンチはチャンス」でもあるのです。‥‥ですが、そういう意識は旧来技法に足場を置いた「デジタル作画」の話題からは感じません。
アニメーション制作統合環境のソフトウェアにしても、レタスやアニモの事例を今一度、思い起こしてみるべきです。私が2003年前後にAfter Effectsオンリーで撮影一式を請け負う試行錯誤を繰り返していた頃、周りの多くの人々は「デジタルのアニメ撮影はコアレタスやアニモのディレクターじゃないとできない」なんて言ってたのです。‥‥よく覚えております。
しかし、現状はどうでしょうか。
After Effectsで撮影作業を請け負うのが一般的になってから現場に入ってきた人は経緯を知らないでしょうが、今と似たような状況は前世紀末・今世紀明けにもあったのです。では、何が理由で、そうしたアニメ制作統合環境が廃れたのか、経験のある方は思い起こして分析すべきですし、経緯を知らない人は調べてみると良いです。
少なくとも私は、現在のアニメ制作統合環境ソフトウェアの傾向は、「以前と同じ穴」にハマっていると感じます。私がコアレタスに興味を全く抱かなかったのは、妙な言い方ですが「アニメ用に作られていた事」です。新しい可能性を求めてコンピュータを使っているのに、当のソフトウェアが「アニメってこういう風に作ればいいんでしょ」とばかりに作用や表現を押し付けてくるのが、たまらなくイヤだったのです。
外国製の統合環境のエフェクト紹介で「グラー」とか書いてありますけど、グローとブラーが合体した新しい用語なのかな‥‥。私にしてみれば、「光らせ方は作り手が工夫して決めるから、アニメ風の「T光」プリセットなんてノーサンキュー」なんです。悪意はないだろうけど、ショボいグローフィルターを見ると、アニメってそんなにチープなイメージですかね‥‥とちょっと悲しくなります‥‥。そりゃあ、みんなTrapcodeを使いたくなるよね‥‥。
今までは、旧来の制作システムを踏襲する必要がありました。それはフィルム撮影台時代のワークフローの「一部差し替え版」だったからです。しかし、ワークフロー全域をコンピュータベースに移行してもなお、昔の方法に固執するなら、言うなれば、そうはもう、自動車やバイクではなく「4足歩行にこだわって、機械の馬を作る」ような行為です。新しい動力源に切り替えたのなら、それにふさわしい最適な設計・運用と販売戦略がある‥‥と思うのです。
一生懸命作っても報われるとは限りませんし、丁寧に作った品質の良いものが無条件に売れるなんて事もありません。万歳突撃して玉砕なんて、誰も望んでないと思うのです。だったら、昔ながらの「アニメ業界の戦陣訓」なんて踏襲し続けることはないです。しかし、どうも「デジタルで万歳突撃をする方法」を一生懸命模索しているようにも思えるのです。
作業内容がよりレベルアップして、機材もより高性能なものにリプレースすれば、コストが上昇するのは誰でも判る事です。「4Kになりました。細かい絵を動かす大変な作業になりました。時間はもっと必要になりました。制作費が全然足りなくなりました。」という状況を、今まで通りの運用理念で支えられると思っていますか? 出資者が金に糸目をつけずにどんどんお金を出してくれると思いますか? 細かい絵にかわっただけで、話も絵柄も代わり映えしないアニメに、どれだけお客さんが高いお金を払ってくれるのでしょうか?
ゆえに、制作コストと表現技術は、「オールデジタル」に移行する際の、最重要のキーワードだと思っているのです。技術の見本市って、その後の商談のためにあるわけですよネ。学業の集大成たる卒業制作とは趣旨が大きく異なるのです。「作る」ではなく、「作って、売る」事をいつも頭にイメージしておけば、未来の技術へのスタンスや考え方、取り扱いも相応に変わってくると思います。
私が最重要視しているのが、まさに新しい「表現技法」と「制作コスト」の2つなので、‥‥なるほど、今の「デジタル作画」の話題とどうも噛み合わないは、致し方ない事か‥‥と感じた次第です。私にとって「制作コスト」と「表現技法」は、まさに「作って売る」ための主軸なので、そこを抜きに未来の展望を論じても、接点は発生しないわけです。
業界の人々が、今の制作システムを「デジタル化」した結果、好転なり改善する‥‥とホントに考えているのか、とても疑問に思うのです。「4Kでオールデジタルなら、何か良い未来が待っている」と思い込もうとしているようにすら、見えます。
私はアニメ業界とは違うやり方で「4Kのアニメ」を作ろうと研究していますが、研究すればするほど、困難にブチあたります。「技術開発レベル」の取り組みでは瑣末な技術見本市に終始してしまい、「今までの思考では、戦いには勝てない事」がひしひしと実感できます。根本的なバトルドクトリンの変革が必要なのです。
技術屋の殻を破り、技術とビジネスを結びつける、またとない機運なのです。4K8Kの新しいアニメーション映像技法は、困難もリスクも伴いますが、従来のアニメとは違う表現手法も数多く導入できるので、「ピンチはチャンス」でもあるのです。‥‥ですが、そういう意識は旧来技法に足場を置いた「デジタル作画」の話題からは感じません。
アニメーション制作統合環境のソフトウェアにしても、レタスやアニモの事例を今一度、思い起こしてみるべきです。私が2003年前後にAfter Effectsオンリーで撮影一式を請け負う試行錯誤を繰り返していた頃、周りの多くの人々は「デジタルのアニメ撮影はコアレタスやアニモのディレクターじゃないとできない」なんて言ってたのです。‥‥よく覚えております。
しかし、現状はどうでしょうか。
After Effectsで撮影作業を請け負うのが一般的になってから現場に入ってきた人は経緯を知らないでしょうが、今と似たような状況は前世紀末・今世紀明けにもあったのです。では、何が理由で、そうしたアニメ制作統合環境が廃れたのか、経験のある方は思い起こして分析すべきですし、経緯を知らない人は調べてみると良いです。
少なくとも私は、現在のアニメ制作統合環境ソフトウェアの傾向は、「以前と同じ穴」にハマっていると感じます。私がコアレタスに興味を全く抱かなかったのは、妙な言い方ですが「アニメ用に作られていた事」です。新しい可能性を求めてコンピュータを使っているのに、当のソフトウェアが「アニメってこういう風に作ればいいんでしょ」とばかりに作用や表現を押し付けてくるのが、たまらなくイヤだったのです。
外国製の統合環境のエフェクト紹介で「グラー」とか書いてありますけど、グローとブラーが合体した新しい用語なのかな‥‥。私にしてみれば、「光らせ方は作り手が工夫して決めるから、アニメ風の「T光」プリセットなんてノーサンキュー」なんです。悪意はないだろうけど、ショボいグローフィルターを見ると、アニメってそんなにチープなイメージですかね‥‥とちょっと悲しくなります‥‥。そりゃあ、みんなTrapcodeを使いたくなるよね‥‥。
今までは、旧来の制作システムを踏襲する必要がありました。それはフィルム撮影台時代のワークフローの「一部差し替え版」だったからです。しかし、ワークフロー全域をコンピュータベースに移行してもなお、昔の方法に固執するなら、言うなれば、そうはもう、自動車やバイクではなく「4足歩行にこだわって、機械の馬を作る」ような行為です。新しい動力源に切り替えたのなら、それにふさわしい最適な設計・運用と販売戦略がある‥‥と思うのです。
一生懸命作っても報われるとは限りませんし、丁寧に作った品質の良いものが無条件に売れるなんて事もありません。万歳突撃して玉砕なんて、誰も望んでないと思うのです。だったら、昔ながらの「アニメ業界の戦陣訓」なんて踏襲し続けることはないです。しかし、どうも「デジタルで万歳突撃をする方法」を一生懸命模索しているようにも思えるのです。
作業内容がよりレベルアップして、機材もより高性能なものにリプレースすれば、コストが上昇するのは誰でも判る事です。「4Kになりました。細かい絵を動かす大変な作業になりました。時間はもっと必要になりました。制作費が全然足りなくなりました。」という状況を、今まで通りの運用理念で支えられると思っていますか? 出資者が金に糸目をつけずにどんどんお金を出してくれると思いますか? 細かい絵にかわっただけで、話も絵柄も代わり映えしないアニメに、どれだけお客さんが高いお金を払ってくれるのでしょうか?
ゆえに、制作コストと表現技術は、「オールデジタル」に移行する際の、最重要のキーワードだと思っているのです。技術の見本市って、その後の商談のためにあるわけですよネ。学業の集大成たる卒業制作とは趣旨が大きく異なるのです。「作る」ではなく、「作って、売る」事をいつも頭にイメージしておけば、未来の技術へのスタンスや考え方、取り扱いも相応に変わってくると思います。
