Apple Pencilの使える無印iPad

ProでもMiniでもAirでもない、無印のiPad。値段を3万円を切る設定で安くする、Apple Pencilが使える‥‥など、2018年の春にでるiPadについて、色々な噂が飛び交っていましたが、価格は据え置きでApple Pencilを使える方向でリリースされましたネ。

 

 

Apple Pencilが使えるようになる効果は絶大です。しかも、PagesなどのApple定番のアプリがApple Pencilに対応‥‥となれば、絵描きだけでなく、様々な打ち合わせにも活用できます。

 

私はiPad Proを持ち込んで打ち合わせしますが、その場で紙媒体で書類が渡された場合は、まず書類=まあ、大概は絵コンテですが、自分の担当箇所だけiPadのカメラで撮ってしまって、その画像にメモをApple Pencilで書き込みます。PDFの場合は、PDFファイルに直にメモ(ベクターの画像としてレイヤー的に書き込めます)します。

 

私の作業スタイルの場合、紙にメモを書き込んでも「オフライン」になってしまって、後々面倒なのです。デジタルデータとして保持しておけば、容易にネットワークに「オンライン」状態、すなわち、Air Dropで他のマシンに転送したりクラウドに保管して、いつでもどこでも情報にアクセスできます。

 

手書きで簡単にメモできて、iPadやiPhoneやMac、さらにはWindowsやLinuxやFireでも閲覧できる‥‥というのは、かなり便利なのです。

 

 

競合となるFire HD 10は、出色の製品です。実質13,980円(税込=この点がAppleの表示価格と違う)で高品質な本体性能が手に入る恐るべき製品ですが、一方でユーザレビューを見ると「アプリが少ない」などの不満も多いのは事実です。

 

しかし、Fire HDは、Kindle本やPDFやビデオや写真を閲覧するのが主目的で、様々な使い道で活用する端末ではありません。「自分参加型」の作業や趣味にはまるで適していません。あくまで受け身です。ゆえの13,980円です。FireOSの提供する機能の範疇で、高品質の体験ができるのがFireであって、iOSで動作するiPadと比べるべきではないのです。

 

私の例えで恐縮ですが、iPadが戦闘爆撃機だとしたら、Fireは攻撃機のような存在として捉えて、適材適所で扱うのが肝要です。

*う〜ん。あんまりうまくハマった例えじゃなくてスマンす。

 

 

 

 

もし、私が新型無印iPadを買うとすれば、ほぼ100%、打ち合わせ用途です。

 

作画作業では絶対的・物理的な描画面積が小さいので、プロ用途としては本格的に使えません。やはり、最低でも13インチ(12.9ね)は必要でしょう。

 

なので、少なくとも私は、今のところは必要ないかな‥‥‥という感じです。

 

ただ、絵を描く上での、デジタルインプットメソッド‥‥というか、ペンタブで絵を描く‥‥という行為に慣れる「最初のiPad」としては、値段の安さゆえに意義のある製品といえましょう。

 

iPadの良いところは、とにかく使い勝手が広い‥‥という点です。絵を描くペンダブ用途から外れたとしても、様々な使い道があります。この点はFire&FireOSを大きく引き離している優位点です。‥‥その代わり、値段はFireの3倍くらいはしますけどネ。

 

 

すぐに注文すると、数日で届くようなので、Appleにありがちな製品到着までの待ち時間も少ないようです。

 

 

 

‥‥iPadで思い出したけど、最近の作業計画の必要機材でiPad Proを入れ忘れた‥‥。わたし的に、あまりにも「普通」の存在になり過ぎてて‥‥。

 

自分で所有したい私はともかく、これから先の色々な作業展開では、現場にiPad Proも必須‥‥でしたわ。

 

 

 

 

 


環境維持の希薄感

今後の作業環境について色々と思索を巡らせるに、紙と鉛筆で仕事をしてきたアニメーターは、初期導入費用、環境維持・メンテナンス、そして環境性能の更新‥‥といったことに、非常に希薄なのかも知れません。思い起こせば、コンピュータを本格的に使う前の、紙時代の私は「環境の維持費」には無頓着でした。

 

でもそれは、致し方なき事。

 

自分の身に降りかからなければ、希薄にも無頓着にもなろうというものです。

 

 

私がフリーアニメーターを1986年か87年だか(記憶が曖昧)にスタートした当時、環境設備の要は、「紙を透過する設備」でした。

 

私は当時独り立ちして借りていた大泉のアパートに作画机を導入することができず、ライトボックスで凌いでいました。今、そのライトボックスを見ると、それはもう小さな天板のショボい面積で、内部に蛍光灯のユニットを設置しているため厚みも相当ありました。最初の2年間をその粗末なライトボックスで作業していたため、制作会社に詰めるようになって正規の作画机を使うようになってから、どうにも違和感があって馴染めない月日が続いたほどです。

 

当時の価格はわかりませんが、今ですと、十数万円で作画机が買えます。「結構いい値段がするね」と思う人もいましょうが、作画机はぶっちゃけ「一生物」で、おそらく100年はもつんじゃないでしょうか。100年使った作画机を知らないので、あくまで予測ですが。

 

作画机を自費購入すると、最初に10万円前後の出費は余儀なくされますが、逆に考えれば、大きな出費はそれでおしまい。

 

作画机を数年ごとに買い換えるなんてありえませんよネ。

 

しかし、コンピュータの世界では、数年ごとに機種を更新するのは常識です。10年20年維持できるパーソナルコンピュータなんて、少なくとも映像制作の世界では聞いたことがありません。数千万の導入費用を費やすポスプロのソリューションだって、10年後には「おじいちゃん」です。例えば、ドミノというVFX/グレーディング系のソリューションは、イノセンスを制作していた2003年の時点ですら「そろそろ時代についていけなくなってきたね」と言われていました。理由は単純で、処理速度が遅く、待ち時間が長いからです。

 

ポスプロはともかく、個人用途においても、「コンピュータを自分のメインの道具にする」と決めて、それで「商売」をし始めたら、多かれ少なかれ、時代の映像技術や品質の向上に合わせて機材更新を余儀なくされます。

 

どんどん機材は更新していかねばなりません。私は1997年に自腹でPowerMac8600を買って仕事をする、あるいは仕事場で用意してもらった機材で作業をするようになって以来、紙の作画時代の意識から「冷水を浴びせられた」ごとく、「環境への意識」について抜本的な考え直しを迫られ、準じるようになりました。

 

アニメーターは、環境更新に対しての逼迫した意識というか、心構えが、一生物の作画机で仕事するがゆえに、非常に希薄です。

 

 

 

コンピュータで絵を描いて仕事する状況を考えて見ると‥‥

 

例えば、作業グループで考えた場合、

 

2.5KのCintiqを何年前にスタッフ全員分をいくらで導入した?

 

27&32インチの4Kタブレットが発売されるが、もし機材をリプレースするとなれば、Cintiqだけでいくら必要になる?

 

結構、イイ金額になりますよネ。

 

4Kタブレットを使えるようにするためには、当然の事ながら、マシンも4Kの出力ができなければなりません。

 

もし「今を凌げればいいや」と、10万円以下で買える最低限スペックの「デジタル作画モデル」で揃えちゃった場合、どれだけ4Kタブレットに対応できる性能があるでしょうか。少なくともMac miniは30Hzまでしか出せなくなるのでチラつきが酷くてNGです。

 

安いマシンで買い揃えた場合、マシンの買い替えすら必要になってきます。

 

‥‥‥そんなのさ‥‥‥、個人規模だけでなく、会社規模だって、相当キツイはずです。

 

なので、機材更新できない会社はこれから先、結構出てくるんじゃないですかね。

 

すでに「アニメ業界はCS6止まり」の前例が、未来を雄弁に物語っています‥‥‥よネ。

 

 

 

アニメ作画の作業環境をコンピュータに移行するには、まず何よりも、「環境維持の希薄感」からの脱却が必要です。

 

導入しようとするフリーランスのアニメーターに対しては、然るべき「未来のなりゆき」を説明しておく必要があるんじゃないでしょうかね。

 

旧来の原画動画工程を、ペンタブ作画に置き換えただけの「デジタル作画」だけでは、ぶっちゃけ、稼ぎが少な過ぎるでしょう。金食い虫のコンピュータを導入したからには、原画・動画だけではなく、色々な「絵の仕事」「映像の仕事」をこなしていかないと、自滅・破綻・崩壊は目に見えています。

 

極論を言えば、原画だけで喰っていきたいのなら、コンピュータなんかに手を出してはダメです。原画だけでは稼ぎが足りません。

 

原画を描くのが自分の天分だ!原画の仕事以外したくない!‥‥というのなら、できるだけ環境維持費を低く抑える工夫をしなければ、少なくとも今の原画単価では電卓を叩くまでもなく破綻は必至です。

 

「だからこそ、原画や動画の単価向上を、だな」

 

‥‥と言う人もいるでしょうが、それはどうすれば実現するのか、何年何月に、何円に向上するのか、全く見えてきません。

 

 

 

まあ、ネットを検索したりメールの送受だけで使うのなら、映像制作オンタイムの機材など必要ないです。それこそ、10年前のMac miniだってなんとかなります。

 

しかし、プロの現場で、プロのツールとして使う、コンピュータとその周辺環境は、それ相応の性能と現代性を有する必要があり、その維持費は紙の作画のアニメーターの環境維持〜たまに蛍光灯を交換するとか鉛筆削りを買い直すとか〜より格段に出費がかさむものです。

 

 

 

もし私が、フリーランスのアニメーターの人に「仕事を引き受けたいから、自腹でマシンを買って環境を作るよ!」と言われたら、まずは、機材購入にはどんな性能の製品をチョイスすべきかとその初期導入費用、その次に、その機材環境を何年ごとに更新していくかの予測と費用、さらに、その機材環境で当座の仕事の他にどんな仕事を引き受けて個人全体の収益を成すか、そして、これからどのようにコンピュータで絵や映像を作る仕事を盛り上げていくかのロードマップまでを示さないと、とてもではないですが、「コンピュータを買うと良いよ」なんて無責任に後押しできません。

 

そうした前提を踏まえてもなお、コンピュータを導入して一緒に仕事をしようとする人には、コンピュータや映像技術の知識をどんどん蓄積してもらって、積極的に良い条件の仕事を依頼して、ロードマップを1歩ずつ共に踏みしめていこうと思います。

 

「そこまで考える必要があるかね? 自己責任でいいんじゃん」と言う人もおりましょうが、アニメは人間が作るものなので、その人間が自滅しちゃうような導き方や後押しは未来に繋がっていかないのですよ。

 

アニメはなんだかんだ言っても、共生で成り立っている‥‥のは、アニメ業界の人なら誰でもお判りのはず。

 

私らは少人数制の制作体制を敷こうと計画していますが、ゆえに、社内・フリーランスおしなべて1人各々のヒューマンパワーが重要になってきます。今後、フリーランスの作業者の人々が新規参入する際には、どのように生き残って未来に発展していくかも含めて、共に切り拓いていく覚悟が必要なのです。

 

「当座の仕事を引き受けてもらうために、やっすいマシンを勧めて買ってもらっちゃった。数年でガラクタになるようなマシンだけど、そんなのは自己責任でしょ。個人の家計なんて、自分には関係ないし。」

 

‥‥なんていう酷いことは、私にはできません。

 

もちろん、他人の家計までズケズケと踏み込むつもりはないですが、コンピュータを導入して仕事をすることが、家計に大きく影響し、その環境維持の金額はいかほどか‥‥は、誠実に告げるべきだと思います。

 

私はね‥‥、キャリアのスタートをフリーランスで開始して、苦難の10年間を過ごしたがゆえに、その辺への思い入れが強いのかも知れません。やっぱり、最初から社員だった人には、出来高オンリーで仕事をする人間の不安なんて、肌身で感じられないでしょう。まあその逆も然りで、フリーランスの人には、会社の組織に組み込まれる閉塞感と回りくどさは実感できないとも言えますが。

 

 

もし、「デジタル作画のエヴァンジェリスト」なる人がいるのなら、ソフトウェアの使い方を指南する‥‥なんて近視眼的な部分に止まらず、デジタル作画にはどのような明るい未来が開けているのか、どのような苦難が待ち構えて乗り越えていくべきか、未来のロードマップをも伝道すべきではないでしょうか。

 

少なくとも私は、新しい技術を伝道する際は、技術的なことはもちろん、苦悩も歓喜も伝えて、どのような未来を作りたいか‥‥まで分かち合いたいと思うのです。

 

エヴァンジェリストは「人間マニュアル本」「生ける質問箱」じゃないでしょう。

 

新しい取り組みや技術ムーブメントが未来に何を成し得るのか、技術解説や普及を通して「未来の自分たちの世界」を説く役割が、まさにエヴァンジェリストです。

 

その過程において、「環境維持の希薄感」を丁寧に取り除いていくことも、必要になりましょう。

 

 

 

 


金を忘れて

パソコンなりタブレットなり、コンピュータ機器を用いて絵を描く‥‥というのは、「金がかかる」行為であることを、なぜかネットではスポ〜ンと忘れ去られているかのように、思う今日この頃。

 

1990年代後半、まともに「コンピュータで絵を描く」には、60〜80万円前後かかったものです。

 

その後、高性能・低価格なPC/Macやモニタやペンタブの出現によって、20〜40万円くらいまでは下がりましたが、「紙と鉛筆と消しゴムと定規と絵の具と筆」=数千円前後より遥かにお金がかかるのは、今も変わりありません。

 

パソコンで絵を描くと、金がかかる

 

まあ、紙に絵を描くよりも、パソコン一式を買うほうがお金がかかるのは、誰でもわかりますよネ。プロに限らず、素人さんでも。

 

数年前、「デジタル作画」「ペーパーレス」を推進する文書を読んだ時に、このあまりにも基本的な部分に全く触れておらず、耳障りの良い部分だけが列記されていたことに、ものすごい不信感を抱いたことがあります。

 

そればかりか、自由意志で発言できるツイッターにおいても、「コンピュータで描くと金がかかるよね」的つぶやきは、ほとんど見かけません。

 

 

なぜ、なんだろう。


「紙とデジタル、どちらにするか迷う」「どちらかを問う」みたいな論調も目にしますけど、迷ったり是非を問う以前に、そもそも導入できる見込みはあるのでしょうか。

 

ランニングコストは実際に運用してからしみじみ痛感するものだとしても、イニシャルコスト=初期導入費用だけでも、結構な額になりますけど、それをどう工面するのでしょうか。

 

私は少なくとも、一大決心をして、清水の舞台から飛び降りる覚悟で、コンピュータ関連機器一式を1997年に買いましたし、今でも、自腹で相当な出費をしています。関連機材を購入して環境を整えて、年次や何年かおきに環境をバージョンアップしていくのって、相当キツいですよ。何か、大きな目的でもなければ(=つまりハイリターン)、そう易々と支え続けられるほど、コンピュータは甘くないです。

 

いろんなことを全て後回しにして、コンピュータにお金を使える人って、少なくとも全員ではないですよネ。よほど、「これがあればイケる」と確信している人でしょう。

 

どうにも奇妙なんですよね‥‥。

 

なぜ、肝心の金の話はふわっと希薄になって、原画や動画の作業内容の話に進んじゃってるんでしょうね。作画机を購入したら30年は余裕で使える‥‥のとはわけが違うのです。コンピュータは最前線用途では10年もちません。

 

金がないから、そもそも導入は難しい‥‥という言葉はほとんど聞こえてこないですよネ。特にツイッターでは。

 

そんなにお金の話って、ふわっと扱えるんでしょうかね?

 

 

私は、コンピュータにお金がかかることは大前提で、隠しもしませんけどネ(このブログの通りに)。むしろ、その「金食いの悪魔」と、どのように「契約」して、「未来に何を得て凌駕するか」を考えます。

 

 

コンピュータで絵を描くのは金がかかるぞー。

 

イニシャルコストとランニングコストは、紙なんて比較にならないほど金がかかるぞー。

 

だからこそ、今までの作画工程のままリプレースする程度じゃ、対費用効果が少なすぎるぞー。

 

全く新しい技術体系が問われるぞー。

 

 

‥‥と次元大介曰く「独り言の悪い癖」を、またここで世界に向かって叫ぶ。

 

 


ジンバル

ジンバルを導入しようと思ってたのです。

 

趣味だけでなく、むしろ仕事で少なからず使うようになる‥‥と考えて、DJIのOSMO Mobile 2を。

 

 

 

そしたら、どこのショップも欠品。

 

製造元から供給されずに、品薄状態なのでしょう。

 

 

まあ確かに、注目の製品ではあります。ジンバルを使った「ぬめー」っとした撮影を可能とする定番商品の2型が、1万6千円まで価格を下げての登場ですもんネ。

 

せっかく4K60pのiPhone8をもっているので、有効活用しようとは思いつつ、手ブレは如何ともしがたく、オズモは近いうちに装備に加えようと思っていました。

 

 

もうちょっと早めに手を打っておけば良かったのかな。在庫が切れるとは考えておりませんでした。やや不覚。

 

くわー。直近の撮影には間に合わんすな。まあ、もともとiPhoneはオマケのつもりだったし、2つのカメラを同時に使うことはできないので、なくても良いと言えば良いのですが‥‥。

 

でもまあ、次の作品のロケハンに間に合えば、まあいいか。ロケハンの用途で考えると、iPhone8&オズモって、今のところ最強な気がするし。

 

 

 


雑感

アニメ業界内部のクオリティの落差は激しいです。どこか1社の事例を引き合いに出しても、それがアニメ業界全体を言い表すとは全く言えません。1社どころか、1社の内部においても、供する用途やオーダーによって、求められるクオリティや実際の事例はまちまちです。

 

いつの頃だかに確立した旧式な作業規格を今でも使い続けている事例は、アニメ業界では決して珍しくありません。フロッピーを使い続けている西陣織の事例を笑っていられないのです。

 

例えば、1.3〜1.6Kのビデオ解像度で、QuickTimeのアニメーション圧縮=8bitの色深度‥‥のような運用を今でも続ける事例は存在します。2008年ではなく、2018年現在においても。

 

「なぜ、苦労して作ってきた映像を、最後の最後で、ショボくて古いフォーマットで出力しちゃうわけ????」と思う人は思うわけですが、「それしか知らない」「それが普通」な現場にとっては、「何をそんなに驚かれているか」も解らないのです。

 

2011年前後に、私らの作業グループは、ProResコーデックへと主軸を移しましたが、それは単にコーデックとしての品質が高く使いやすかったからです。ProRes422(HQ)とProRes4444が出た頃で、特に4444はDPXの連番と比較しても全く同じと言っても言い過ぎではないクオリティを誇るにも関わらず、そのデータ容量のコンパクトさは突出していました。もちろん、あくまでプロ用途での話で、コンシューマ向けのコーデックよりは遥かに大きいですヨ。

 

ここ数年で出てきたAvidのDNxHRもかなり綺麗な画質です。DNxHDは色々と問題がありましたが、DNxHRの444は相当綺麗‥‥というか、面白い仕掛けがコーデックにしてあるのでトーンジャンプの抑制力が優れており、Avidを使うのなら今後はDNxHR推しです。

 

ProResでは4444の「XQ」も加わり、12bitへの本格的な対応が可能になっています。Dolby Visionなどの12bit方式に対応するには、XQやHRなどの12bit対応コーデックによるコンポジット&編集周りの更新は必須でしょう。

 

‥‥という話を書いても、アニメ業界の内情はホントにまちまちです。ようやく、Adobe CCに切り替えた会社も増えてきた‥‥と思えば、「ウチはCC 2014だよー!」という話も聞こえて、「なんで、2014??? もうCC 2018はずいぶん前にリリースされてるよ? どうして最新版で統一してないの??? CCを使う意義は、どんなにバージョンが増えても、最新版で統一できることだろーー!! この〇〇ーーーー!!!」と、まゆこタンばりに叫びたくなるのは、私だけではないはず‥‥。

 

CCになってもこのありさま。

 

ホントにナゾです。今でもCC 2014を使っているとか。‥‥CCを導入する意味、ないじゃん。2013年製のiMacやMac ProでもCC 2018は動作しますヨ。TrapcodeもOKです。

 

ホントにアニメ業界ってのは‥‥‥‥とは、他の映像ジャンルのスタッフに冗談交じりで皮肉られることですが、実際、反論はできない実情を目の当たりにすることも多いです。

 

古くても、誇れることなら全然良いのです。単にズボラで無気力・無関心が理由で古いままなのは、誇れることでは全くないです。

 

 

今、業界での「新旧」のホットな話題は、コンポジット周り云々ではなく、やっぱり「作画」ですよネ。

 

紙作画だ、デジタル作画だ、‥‥の議論はとことんすべきだとは思います。

 

各社各グループの特質やアドバンテージを鑑み、作画を紙のままでいくか、タブレットに変えるかは、当事者たちが決めていけば良いことです。

 

しかし、古い意識のまま映像制作をフローしてフィニッシュしている限り、どんなに作画にこだわっても、出力される絵は古い品質から逃れられません。

 

実は、作画の今後を問うのと同じ重要度で、コンピュータで扱う作業部分〜ペイント、背景、撮影の「近代化」も問われると思います。もちろん、制作管理をいつまでも手作業で入力しているのも限界アリアリですしネ。

 

作画の近代化を問う‥‥ということは、イモズル式に、そのあとの工程も少なからず近代化を問うことになります。

 

つまり、「近代化に聖域なし」です。

 

 

私は、紙のままで作画をしたい人々は、紙のままでもいっても良いのではないか‥‥とは思っているのです。私も「紙」出身者なので。

 

ただ、それには「紙を使う決定的なビジネス視点での理由」は必要でしょう。アニメで作画をしている人間は、決してボランティアでも学生さんの自主制作でもないのですから、「紙を使い続ける、商業的な理由」は求められて然り‥‥です。

 

昔からそうだったから‥‥なんていう情けない理由ではなく、「精査した結果、デジタル作画より機材運用コストを格段に低く抑えることが判った」とか「鉛筆の描線を活かしたハイクオリティな制作方法を確立した」などの明確な理由が必要です。紙のフローを「再定義」することだって、近代化足り得るんじゃないでしょうか。

 

一方、「デジタル作画」はそれを推進する人々が未来の「商業的意義」を確立していくべきでしょう。ランニングコスト、環境維持費と更新費は紙作画の比ではなく、次の環境リプレース時期にそれ相応の額面を叩きつけられるでしょうが、それも含めて「ビジネスモデル」ですから、推進する人が活路を見出すほかないです。

 

‥‥まあ別に、「デジタル作画」に限ったことではなく、何かを主導する人は、活路を見出す立場を引き受けざるえませんよネ。

 

私らは紙作画でもデジタル作画でもない路線で、ぶっちゃけ、「紙の作画か、デジタル作画か」の議題は対岸の騒ぎ、蚊帳の外です。私らの進めている技術は、社会が4K8Kの時代に移行すればするほど、有利な要素が増えてきますが、ゆえに、浮き足立って足をすくわれないように、確実に1歩ずつ、橋頭堡を築きながら進むのみです。時代の風が吹いてきたと、早々に浮かれるのは実は一番危ういのです。時を読み、粛々と‥‥が、ここ1〜2年の重要なテーマでもあります。

 

 

でもまあ、いろいろ考えると、結局はバブルソートのごとく、いろいろな会社や部署が持ち得ているポテンシャルによって、昇順と降順がソートされるように思います。これから未来へ10年間くらいの間にネ。

 

だからこそ、せっかくのポテンシャルを1.5Kや8bitでわざわざ性能ダウンさせることはないでしょうよ‥‥ということです。

 

 


新しい色の世界

アニメ業界では、ほぼ縁のない「log」=ログの運用。実写作品ですと、linear=リニアでみすみす階調を殺してしまうのをlogで救う恩恵は大きく、その後のVFXやGradingでログの運用の威力が発揮されます。

 

実はアニメでも「階調を救う」用途で考えれば、ログの運用は有効なように思えるのですが、「今そこにある実物をどうカメラに収めるか」を問う実写と違って、アニメは「白紙から形や色を生み出していく」がゆえに、実際の見た目の色=リニアで作業したいと思うのはいたしかたなきこと‥‥とは思います。まあ、それでも、LUT越しに皆で作業すれば良いだけなんですけど、まず何よりもログの意義を皆で理解する必要がありますし、運用面ではモニタの質も問われるので、やっぱりアニメ業界の現状では無理だとは思っています。

 

一方、4Kでは、HDR10、Dolby Visionなどの規格があり、PQ=perceptual quantization、つまり人間が知覚できる範囲を重視したデータ化(量子化)が盛り込まれています。また、放送用途ではHLG=ハイブリッドログガンマと、これまた異なる方式で4K HDRの特性を活かしたデータ化をおこなっています。

 

未来、このあたりの運用のノウハウは必須になるでしょう。いつまでもsRGBやRec.709のままではいられません。

 

そして、制作管理システムも、4KやHDRを当然のように前提とします。4KやHDRが特殊扱いされるのなんて、あと数年の話ですからネ。

 

 

私は昔「atDB」という撮影業務主幹の管理システムを実践していましたが、その次世代となるソリューションも徐々に準備しています。「astd」という標準技術、さらに、「Astarte」という新しい作業意識を色濃く反映した次世代管理システムも構想しています。「自律連結型ジョブオブジェクト」や「多次元運用ダイヤ」「ダイナミックワークフロー」という、ちょっとキラキラっとした内容をもつシステムですが、要は、限られた人材をどのように有効に活用して、未来のハイレベルな映像制作を実現していくか‥‥ということに尽きます。

 

「Astarte」に関しては、詳しい内容はここでは書けませんが、アスタルテ=女神の名前の通りの内容です。様々な国々で豊饒多産の神として崇められ、一方では軍神でもあり、「古い世界を破壊しては新しい世界を創造する死と再生の女神」(Wikipediaより)ともあり、なんとも「ふさわしい」限りです。

 

すぐにAstarteの実現は無理でも、準備を粛々と進めて、その中で4KやHDRや60pの経験値を積んでいけば、必ず、新時代のアニメーション制作は可能になりましょう。

 

どこかの偉人さんが言ってたかもしれない言葉‥‥ですが、「想像できることは実現できる」‥‥と、今までの人生で強く実感しています。

 

逆に言えば、想像に甘い点があると、それは実現できない‥‥んですよネ。

 

レシピが具体的に思いつくのなら、それはもう、出来上がる準備段階にある‥‥ということです。

 

 

ログとリニア、HDR10とDolby VisionとHLG。

 

もう色彩のツールは揃ってるじゃないですか。‥‥あとは色世界を作るだけ、でしょう。

 

 


ユニバーサルプラットフォーム

最近、グランドパワー‥‥というか、地上戦の兵器・陸軍の兵器において、ロシアから登場した興味深い、「アルマータ・ユニバーサル・コンバット・プラットフォーム」という戦闘車両の「概念」というか「構想」があります。

 

Wikipediaでは、以下のように、1つのベース車両から、主力戦車、歩兵戦闘車の写真を見ることができます。

 

*自走砲の2S35の写真もあったのですが、どうもベース車両が違う「アルマータ展開の今後の予定」的な写真だったので、載せるのを控えました。ベース車両の違いは、転輪の数でだいたいわかるよネ。アルマータは上の写真のように7つの転輪が特徴‥‥なんでしょうかね。

*おそらく、単なる基礎車両〜シャーシやエンジンなどを共用するだけでなく、電子機器などのNCW的なシステムも共用したり拡張できるプラットフォーム‥‥なんでしょうね。

 

 

要は、「戦車を開発する」「歩兵戦闘車を開発する」「自走砲を開発する」‥‥というそれぞれ専用の単発のプロジェクトで兵器開発をおこなうのではなく、最初からバリエーション展開と運用を考慮した開発プロジェクトをおこなう構想です。

 

こうした構想に似た計画は今に始まった事ではなく、70年以上前の第二次世界大戦においても、ドイツによって「E計画」と呼ばれた戦闘車両の開発プロジェクトがありました。

 

*足回りに資材節約の苦労が忍ばれるE-50。転輪がスッカスカですネ。一方、赤外線照射の暗視スコープ(Owl的なもの)がついてたりと、色々と興味深い‥‥ですが、これ、フィクション(計画で実車が存在せず)なので、メーカーのノリを楽しむプラモではあります。

StanderdPanzer」、いわゆる「標準戦車」という呼び名が、戦中の生産効率における苦悩を逆に言い表しているようで、興味深いですネ。「生産効率における苦悩」…とは、これまた耳慣れた言葉よ。

 

 

基本重量に合わせて、E-5、E-10、E-25、E-50、E-75、そして超重量級のE-100まで、車体の規模に合わせて、様々なタイプをバリエーション展開する計画でした。E-50はパンター系列をリプレース、E-75はティーガー系列をリプレース‥‥というように、既存の「必要に応じて作ったぞれぞれの車両とバリエーション」を整理整頓して各クラスで統合し、効率的で合理的な生産計画を実践するプロジェクトでした。

 

‥‥が、ドイツの敗戦によって、その計画が軌道にのることはありませんでした。

 

 

「でもさ、昔から、例えばIV号戦車なら、ベースの中戦車をもとにして、自走砲、対戦車自走砲、榴弾砲、突撃砲、駆逐戦車、対空自走砲‥‥と、色々とバリエーション展開してたじゃん」と思う人はいるでしょう。

 

しかし、結果は似てても、開発の出発点における、構想や思想が大きく違います。IV号戦車のバリエーション展開はあくまで「後付け」です。例えばナースホルンなら「この中戦車の車体をオープントップに改造して、88mm71口径の強力な対戦車砲を積もう」と「改造」&「路線変更」したまでで、IV号戦車開発計画の当初からバリエーション展開を積極的に計画に組み込んでいたわけではない‥‥ようです。

 

E計画、そしてアルマータは、既存の車両の流用・改造ではなく、あくまで最初からバリエーション展開することを目的とし、車両を「兵装のプラットフォーム」と位置付ける点で、大きく異なっています。

 

 

この思想、この概念。

 

じゅうぶん、活用できますネ。‥‥新しいアニメ制作の概念として。

 

アニメを制作する全体的な枠組みや構造を、「制作する規模のクラス」にわけて、ユニバーサル・プラットフォーム、もしくはユニバーサル・フレームワークとして確立する‥‥という思想。

 

 

これから先の未来、今までのアニメ業界の制作システムや業態のままで、未来のハイクオリティな映像フォーマットに「太刀打ちできるわけがない」のです。アニメ業界の旧来制作システムは、残念ながら、そこまでオールラウンドでも高性能でもないです。限界はもうすぐそこに迫っています。

 

現業界の制作方式は、「70式」=1970年代のやりかたに改造を改造を重ね、「零式」=2000年代に確立された「デジタルアニメーション」にマイナーチェンジを加え続けた状態です。II号戦車やIII号戦車に、重量が重く長砲身の88mmL71を搭載するがごとくです。

 

今以上の改造が可能かを見極める決断は、どこかの時点で必要になりましょう。

 

そして、それぞれの「クオリティクラス」「オーダークラス」「ターゲット」に合わせて、プラットフォームを確立し用意し、柔軟に選択すべき‥‥でしょう。

 

具体的な実践の段取りについては、あまりこういうところではベラベラと喋れませんが、今後、必要になる重要な取り組みでしょう‥‥ね。

 

 

 

こういう話になってくると、ありがちな展開として‥‥

 

大風呂敷を広げて、業界みんなで協議して策定して

 

‥‥なんていう考えが出てくるわけですが、‥‥‥まあ、ダメでしょうね。大風呂敷を広げると、取り回すのが大変、そして畳むのも大変‥‥なのは、みなさんもご存知なはず。

 

大風呂敷自体は、実はそんなに問題ではない(=身の程を知って、徐々に広げていけば良い)のですが、大風呂敷を大勢でコネくり回すのが、極めて厄介なのです。

 

大風呂敷の先にどんな顛末が待っているか‥‥は、もう色々と体験済みの人も多く、あらかたの予測はついているのではないですかネ。

 

みんなで集まって、みんなで意見を出して、みんなで決めれば、みんなの思う通りのものができて、みんなが儲かって、みんなが幸せになる‥‥なんて、いい歳したオトナなら「そんなのあるわけないじゃん」と即答できるはず。みんなの利害がぶつかり合って、最良で妥協案、普通はお流れ、最悪は数派に分裂して闘争‥‥なんて話に、いくらでも‥‥ねえ。

 

例えば、何らかの会合があった際に、集まってくるメンバーは、それぞれ「腹にイチモツ、背中に荷物」を抱えて集まってきます。そのイチモツや荷物は、各メンバーのやりとりの中で交錯し、やがて出来上がるのは「打算に打算を重ね、妥協に妥協を重ねた」産物です。

 

ユニバーサルな取り組みが一番ハマりやすい罠‥‥は、まさにソレです。

 

同じく軍事関連の話題で例えるなら、知っている人はよくご存知の、マクナマラのTFX/FADFです。以下、Wikipediaからの引用です。

 

マクナマラは、空軍のTFX (Tactical Fighter Experimental) 計画と海軍のFADF(Fleet Air Defence Fighter) 計画を強引にひとつの計画に統合してしまった。TFX計画は空軍の次期主力戦闘爆撃機、FADF計画は海軍の艦隊防空戦闘機の開発計画であり、空軍海軍両者とも要求仕様が全く異なるとして反対したのであるが、マクナマラは強引に計画を進めた。その結果完成したF-111は航空母艦での使用が不可能な大型機となってしまい、結局空軍機としてしか採用できず、無惨な失敗となって終わった。

 

〜中略〜

 

前線を知らず、机上だけでの効率化を推し進めたマクナマラの失敗の一例である。

 

〜中略〜

 

F-111は、戦闘爆撃機を名乗りながらも、戦闘機としては使用不可能な大型機となってしまい、純然たる爆撃機としてしか使用できなかった。そのため海軍機としてのみならず、空軍機としても当初の開発目的を達成できなかった。

 

 

 

マクナマラのコレに限らず、ユニバーサル路線や統合路線を掲げたプロジェクトは、相当慎重に目標を定めて脱線せずに進んでいかないと、「パッとせずに尻切れとんぼで」終息することも多いです。

 

ユニバーサルな取り組みは、各方面の色々な意見を総合するうちに妥協と打算にまみれてしまい、「凡庸な結果を導きやすい」ということも、しっかりと認識しておく必要があります。その「凡庸さ」ゆえに、新しい取り組みのはずが、新しい時代に対して最初から「時代遅れ」「能力不足」になることすらあり得るのです。

 

 

ユニバーサルプラットフォームを用いて、「何を勝ち取りにいくか」を、具体的かつ明確にすべきでしょうネ。

 

アルマータも、見る人が見れば、その表面上のステルスっぽい外見ではなく、ロシアのきな臭い野望が見えることでしょう。装甲戦闘車両の開発を効率化をして、未来に何を得ようとしているのか、ちょっと軍事や経済に興味がある人なら、大体察しはつきますよネ。

*でもまあ、私はもちろんのこと、日本人のほとんどはロシアと戦争なんてしたくないでしょうから、お手柔らかにお願いしたい‥‥です。戦争なんて、ちょっとでも足を突っ込んだら、アニメなんて作れない世の中になっちゃいますもん。戦うのは、ビジネスの世界だけでよろしい。

 

何を獲得するかがブレずに明確にさえなっていれば、各ユニバーサルプラットフォームの「クラス分け」も自ずと見えてきましょう。転輪の数、履帯の幅、エンジンの出力や燃料、全体的な重量‥‥などがネ。

 

 

 

 

 


エフェクト作画とお金と

ぶっちゃけ、「原画のことだけ」考えるのなら、紙の作画も「デジタル作画」もまだなんとかなるように思います。しかし、「動画」のことを考えれば、色々なことが「逆算」で「もう無理だ」と思えてきます。

 

例えば、爆発の原画。‥‥そりゃあ、原画だけ描くんだったら、まだ良いだろうよ。しかし、問題は動画です。

 

動画が描けない。原画で「割り先が迷わない」ように描いても、割りミスが頻発します。国内作画ですら、立ち昇る煙が下に戻ったりします。もはや、エフェクト作画の1枚1枚の手描き作画は、動画の時点で無理なんじゃないだろうか‥‥とすら思えます。

 

エフェクトの作画の知識や技術って、どんどん退化し喪失しているように感じます。

 

ゆえに、「そんなこと言って諦めてばかりいたら、技術は失われていくばかりだ」‥‥と、誰でも考えます。

 

じゃあ、エフェクトの動画の知識を、エフェクト作画の得意な人間が指導して、人材を育成しようと考えた‥‥と、します。

 

 

で? そのエフェクト作画の動画の単価は?

 

‥‥‥‥。

 

はい、終了。

 

 

「いやいや、そういう大変なカットは、特別単価を設定してだな」

 

??? 誰がどう言う基準でどのくらいの上乗せで? エフェクトに限らず、大変なカットで、能動的に特別単価が設定された試しなんて、どこに事例がある? クレームをつけて初めて対応するだけでしょ? そもそも、均一単価でバランスしてきた現場じゃん?

 

はい、また終了。

 

王手で「詰み」です。

 

 

 

育成した先に、ちゃんとした料金体系が整ってなければ、どんなに技術を高めようが、手間のかかる作業を安ガネで引き受ける人などいません

 

あるいは、「武士道ならぬ、作画道」にでも訴えかける? 「金など関係ない。作画する喜びこそ。」みたいな精神論を強要する?

 

どう考えたって、一律単価なら、爆発でケムリモクモクで死ぬほど線が多い1枚の絵を描いて、わざわざ「ど貧乏」になりたい人間なんていないでしょ。‥‥よほど、「エフェクト大好き!貧乏大好き!」という変わり者でもなければ。

 

 

こうして、旧来の現場の様々な問題は、解決しよう・改善しようと試みても、逆算・試算した途端に頓挫することが多いです。

 

ゆえに、これから先の未来も、有効な打開策を見出せないまま、今までの現場は今まで通り、歩んでいくしかないでしょう。現場の人間たちのちょっとした工夫や機転で乗り切れる問題ではなく、根本的な問題ゆえに。

 

Someday My Prince Will Come〜「いつか王子様が」なんてことはないです。待ち続ければ待つだけ、単に歳を喰っていくだけです。そして、待ち続けたあげく、改めて自分の年齢を省みて青ざめ、もはや迂回も転進もできずに身動きできないまま、進退窮まる‥‥というシナリオです。

 

 

まあ、あくまで「私の考え」ですが、「エフェクトのアニメーション」が好きで、どうしてもエフェクト作画をやりたいのであれば、もはや「原動仕」のシステムに頼らずに、自分一人で完結する技術を確立すべきでしょう。

 

透過光マスクの作画とか、簡単な煙や水のエフェクトなら、動画作業的にも「稼げる」場合もありますから、それはそれで良いです。

 

稼げるエフェクト動画なら、むしろ、動画工程を活用すべきでしょう。

 

しかし、どう考えても時間がかかりそうな「大爆発」「巨大な煙」「大津波」みたいな複雑至極なエフェクト作画は、作業時間の増大に見合った特別単価を設定しない限り、破綻は必至です。

 

稼げないエフェクト動画を、どうするか‥‥ということです。

 

「エフェクト作画が好き」と原画マンが心に秘めるのは構わないです。しかし、動画の料金体系のことも考えて、必要に応じて別路線の未来の技術を確立していかないと、エフェクト作画はやがて「描きたいのは原画マンだけ」みたいな話になって、もっと先には「エフェクト作画を動画で経験していないので、そもそもエフェクトが描けないし、思い浮かびもしない」なんていう状況も頻発しましょう。‥‥つーか、すでにそう?

 

今は1988年じゃなくて、2018年です。色々な作画のアプローチ、アニメーションのアプローチがありましょう。

 

以下の2008年に作ったムービーは、このブログで何度も引き合いにだしていますが、2008年の10年前のマシンでも、エフェクト作画を一人で「原動仕」を完結させることは可能でした。

 

 

一人で作業が完結する‥‥ということは、言うなれば、一人の工夫次第で色々と表現も広がる‥‥ということです。火砕流、土石流のような極めてディテールの細かいエフェクト作画だって、自分次第で実現できましょう。

 

「誰かが動画をやってくれないと、どうにもならない」という立場でエフェクト原画を描き続けていたら、おそらく、この先はどんどん窄まっていくばかりです。動画マンの誰ひとりとして、ビンボーにはなりたい人はいないでしょうから。

 

稼げるエフェクト動画なら良いですが、稼げないエフェクト動画をどうするか。

 

「俺たちもビンボーしたんだから、お前らもビンボーせい!」なんて、少なくとも私は言う気になりません。

 

 

エフェクト作画が好き? ‥‥ならば、そのエフェクトのイメージは、既に脳内でアニメーションのムービーとして再生されているはず。

 

だったら、動画マンに頼るだけでなく、別の方法も考えてみたら良い‥‥と、私は思います。

 

 

 

 


クチパク

アニメでのクチパク。演奏するふりして音源を流すMVのことではなく。

 

口パクは、現在のアニメ、特にテレビですと「閉じ口、中口(半口)、開き口」の3枚セリフが定着しており、ツイッターで「どんなシートワークが適切か」みたいな議論を見かけます。

 

まあ、要は、あくびに見えたり、止まって見えなければ良いだけで、動きの基本をそのまま適用すれば良いだけです。合理的に考えれば簡単にシートのパターンは見つかります。

 

でも。

 

口パクを3枚で済ますのは、アニメの歴史で言えば、必要最低限であり、「それが基本だ」といっても、狭義の「日本のテレビでの、お金をあまり使えないアニメ」の経験則でしかありません。

 

現在の20〜40代前半の人は、あまり聞いたことがないかも知れませんが、その昔、「合作アニメ」というジャンルがあって、要は欧米(特に米)から受注したアニメのことですが、そのアニメ制作においては、口パクは最低でも「Eくち」、つまりABCDE=5枚は最低描かされておりました。

 

標準では、GもしくはHの口まであり、欧米のプレスコ方式に合わせて、セリフの「発音」に同調するよう作画していました。

 

 

>プレスコ

プレスコとはプレスコアリング (prescoring) の略で、台詞や音楽・歌を先行して収録する手法である。「プリレコーディング」 (prerecording) や、その略である「プリレコ」とも呼ばれる。
アニメーションの作成においては、収録された台詞や音楽に合わせて絵を描き、作成する。また、ミュージカル映画でもよく用いられ、先に収録された歌やタップなどの効果音に合わせて俳優が演技を行う。

 

 

A〜Dが、閉じ口から大開き口への段階的クチパク、D〜Fが「オウ」の発音を描き、GやHは「ヴ」「ス=TH」の口だったように記憶します。うろ覚えなので、ズレているかも知れませんが、とにかくクチパクの枚数は多く、ぶっちゃけ「枚数が稼げる、つかの間の安らぎ」の1つでした。

 

ここで勘が良い人は思うはず。「そんなに細かくクチパクを設定したら、中セリフはどうすんの?」‥‥ということですが、そこはそれ、プレスコのスポッティングに合わせて「一番近い発音の時間的グリッドに沿わせて、中セリフを合わせる」ことで作業していました。

 

もっと、根本的な疑問。「そんなに細かくクチパクを合わせる必要があるの?」‥‥‥ですが、それは私も知らん。理由は知らん。

 

「口は細かく合わせてくれ。金は払う。」という欧米のオーダーに準じていただけです。‥‥というか、いち動画、いち原画の、しかも駆け出しの頃の私がクチを挟める領域ではなく、特に動画の頃は「口パク、枚数多くてラッキー」だったので、そのまま従順に作業していました。

 

なぜ、あの頃の合作アニメが、あんなにセリフの発音描写に細かかったのか‥‥を、真の理由を知っている人がいたら、いつか、呑みながら教えてください。

 

 

ちなみに、合作でも「口パク3枚でイケる」と判断した作品もあったようで、3枚セリフの合作もありました。

 

しかし主流はあくまで「いっぱい口パクがある」合作で、実際に原画を描く時には、必要なクチをスポッティングから拾って描いていたので、結構煩雑でしたヨ。「A1の時は、BセルのセリフはA,B,D,F,Hか」‥‥みたいな感じでセリフの枚数は一定ではありませんでした。セリフ口のフルセットの場合、原画で描く口はA,D,F,G,Hと5枚くらい描いて、中割りはB,C,Eだったような記憶があります。‥‥でも、それも、各社各作品で色々だったんですけどネ。

 

合作の作監を担当されていた方なら、その辺の記憶が私よりもはっきりしている人もおられると思います。

*私は駆け出しの動画・原画の時期で、一生懸命こなすのが精一杯で、合作アニメの口パクのシステムを冷静に俯瞰視する余裕がなかった‥‥のです。GやHの口を面白がって描くココロの余裕もありませんでしたし。

 

 

そうした新人時代の経験もあり、また、特に女性キャラの「ウ」の口は中々魅力的なフォルムでもあるので、新しいアニメーション技術では、閉じ口と開き口だけでなく、「ウ」の口、タコちゃんの「チュー」まではいかないけれど、「ウ」の発音グチもデフォルトで作ります。

 

*ちなみに、タコのキャラクターと言えば、貝印の「タコヤン」が可愛くて好きです。

*つーか‥‥今になって気づいたけど、実際は、吸盤はおもて側にはついてないよネ。‥‥イメージです。あくまで。‥‥勢いで思わず描いてもうた。

 

また、女性が「Oh, my Gosh...」のあとで上目使いで下唇をかむクチ(ぶりぶりな演技)も、必要に応じて、口の演技の流れに取り入れてます。

 

こうした口の動きや演技を、無理やりに、昔でいう「クチパク」の枚数で例えれば、3枚なんて極少枚数(つーか、今は閉じ口描き込みで2枚???)ではなく、120枚換算になります。口の動きを60fpsで少なくとも2秒間で表現してリマップするので、枚数で無理矢理に数えればそうなります。

 

まあ、要するに、「口が喋っているように、アニメーションすれば良い」だけです。

 

 

 

今のアニメキャラの傾向で言えば、3枚セリフでクチがまさに「パクパク」動いていれば、要求は満たせましょうし、無用な事故を未然に防げもしましょう。

 

そもそも、プレスコしないのであれば、発音に口パクを合わせるなんて無理ですしネ。実際にセリフを喋っている区間を、それらしく3枚のセルでやりくりするだけです。「パクズレ」でシートを修正するのも、プレスコとは全く違う行為ですしネ。じゃあ、プレスコが理想なのか‥‥というと、そういうわけでもなく、プレスコはプレスコで欠点もあります。

 

現在の作業上のノウハウや慣習は、絶対的な法則でも決まりでもなく、作風やクオリティによって大きく基準が異なります。どんな時にでも通用する流儀や采配ではありません。演技によってはなんでもかんでもクチをハッキリとパクパクさせないで、「1212132」なんていうボソボソした口の演技も必要になりましょうし、口パクにどうしても4枚の絵が必要になる場面もありましょう。

 

 

なんか‥‥‥時代が進むと、絵柄のトッピングはどんどん過剰になるけど、アニメ技術の基礎部分の多様性はどんどん失われて、単純化して簡略化していきますよネ。

 

口パクはまさに「顔の演技」ですが、その多様性は必要最小限のギリギリまで減少して、アニメーション演出上の「Offensive」「Maneuver」「Surprise」は完全にマンネリ化し、見る側に「アニメなんてこんな程度だろ?」的に先読みされている感が否めません。

 

‥‥そんなの面白くないです。

 

せっかく苦労して作るんですから、色々と工夫していきたい‥‥と思います。新しいことができるチャンスに恵まれたのなら。

 

 

 


新製品

今年ほど、新製品の待ち遠しい年はないです。色々と必要になりますからネ。

 

今月3月のAppleのイベントは「教育」がテーマらしく、映像制作に関連する新製品は期待できなさそうな感じです。まあ、やはり、6月のWWDCですかね、本命は。

 

iPad Proの新型、Mac Proの新型は、業務の根幹に関わる重大な製品なので、噂が本当になるのを楽しみにしています。6月に発売‥‥までいかなくても、発表はして欲しいな‥‥。

 

既に発売されたiMac Proはね‥‥、色々と難しい製品なので、ちょっと思案中。内部の性能が高いのは良いんだけど、外部の‥‥つまり、モニタの性能がプロ用途で使い物になるかは微妙なんですよネ。色彩計でちゃんとキャリブレーションできるんだろうか。「ディスプレイP3」としか宣伝していない時点で、ちょっと危うい(業界標準の色域にぴったり適合できない)‥‥というか、「ちゃんとしたモニタは別で用意してね!」という雰囲気まんまんです。

 

その「作業で使えるモニタ」のスタンダード。‥‥つまり、EIZOの新製品も気になります。何を言うても現場では、ナナオのモニターは標準になりますもんね。もちろん、新製品期待の主眼はHDRモニタです。4K解像度はもはや当然で、新製品の焦点は、ST 2084やBT.2020(BT.2100)を明確に扱える(「鮮やか」とか「フルレンジ」とかの中身の謎なプリセットでなく)性能を有していることが必須で、かつ(ここが現場で重要なことですが)、ある程度廉価なモデルが出てくれるのを期待しています。まさか「数万」なんて言わないけど、20万円前後レベル(できれば10万円代)で10bitで2020対応の廉価な標準モニタが出ると良いな‥‥と期待しています。LGの10数万のモデルの上は、一気にEIZOの60万‥‥では、作業者に行き渡りませんもん。

 

それとは別にマスモニ。これから先、ちゃんと4Kをやるんなら、アニメ会社でもDP-V2420やBVM-X300(クラスの製品)の導入は免れんだろうなあ‥‥とは思います。納品する過程でどうしても必要になるでしょうから。

 

 

まあ、2018年度からは、そうした機材の新製品など、お金の話も含めて、ぐるぐるどろどろと動きが流れ始める‥‥予感です。

 

「新製品が待ち遠しい」というのは、最近のアニメ映像制作にはなかったワクワクドキドキ感で、なにやら懐かしい感じです。

 

20年くらい前は、新製品が出れば「できることが増え」て、新製品が出るたびに一喜一憂して楽しかったものですが、またそんな時代が到来して、ものつくりに没頭できるのは嬉しい限りです。

 

ただ単に故障等による機材更新ではなく、機材の「性能面」でのリプレースによって、できることが増えて、具現化できることも増えて、映像表現を盛り沢山に作品に注入して、新時代の品質基準を作ることができるのは、2018年を生きる人間の特権‥‥だと思います。

 

 

 

 



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