鉛筆と未来と

私は今でも大切に鉛筆を保管しています。特に真っ黒な線を描けるペンテルの「999」はデッドストックとして倉庫で眠っています。

 

なぜ鉛筆を保管しているかというと、また使う機会を考えているからです。思い出のためだけにとってあるのではないです。‥‥とは言え、その復活の機会は、おそらく私の晩年の頃になりましょう。

 

私は2013年まで鉛筆活用の可能性をしぶとく探っていました。しかし現在は、鉛筆から離れて、Apple Pencil 100%です。

 

なぜ、鉛筆から離れたのかと言うと、鉛筆の美点・長所を真に活かそうとすると、

 

  • まず、鉛筆をあえて使う以上は、ニュアンスを保つ諧調トレスが必要だが、現場の作業工程が消滅してしまった
  • 鉛筆の黒鉛の粒子と紙の繊維の大きさが4KターゲットだとA4用紙では相対的に小さ過ぎる
  • 解像度を上げると、スキャン時のゴミ取りなどの現実世界の要素が障害となる

 

‥‥などの様々な問題が浮き彫りになったからです。

 

特に用紙サイズの拡大は、運用上の痛烈なダメージを容易に想像できました。ただ、私の主眼は、次世代の映像技術でアニメを作り続けることだったので、Apple PencilとiPad Proの登場によって、鉛筆から道具を切り替えたのです。4Kにおいては、鉛筆そのものよりも、「かつては鉛筆が生み出していたような」ニュアンス豊かな描線が必要です。

 

一方、2Kの旧来の現場においては、業界全体が「諧調トレス」を捨てて「二値化トレス」を選択した時点で、「鉛筆である技術的な理由」は喪失していたと言えます。「PC&ペンタブの導入コストは高価」「デジタルデータのフローが未発達」という運用上の理由で、導入&維持コストの安い紙と鉛筆が重宝されてはいますが、今後どうなるかはわかりません。

 

 

 

鉛筆は、ニュアンス豊かな表現を可能とします。鉛筆画というジャンルがあるほどです。

 

しかし、2000年代後半に、鉛筆のニュアンスを活かす「諧調トレス」は急速に減少しました。そして、現在の一般的なアニメ制作現場ではほぼ全てが「二値化トレス」一色です。

 

標準的なアニメ制作現場の150〜200dpiでスキャンして二値化して中間トーンを切り捨てる方法は、例えるなら、美味しく作った料理を一旦冷凍してレンジで解凍するようなプロセスです。カチンコチンに冷凍するわけですから、流通上の都合は良いですが、味は結構落ちます。

 

鉛筆の熟練者なら、恐ろしいほどに繊細でシャープな線を描画できますが、二値化&スムージングのプロセスで鉛筆のニュアンスはダメージを受けます。

 

■拡大図(かなり拡大してます)

 

スッと抜ける滑らかな線も‥‥

 

 

二値化により‥‥

*かなり拡大しているので、二値化自体にアンチエイリアスが入っておりますが、実際はパッキリとした二値です。

 

 

たとえスムージングをかけても元に戻ることはありません。「抜き」の滑らかな先端は、もはや消えて無くなりました。

 

 

処理前後比較

 

 

二値化&スムージングがもたらした生産性よって、2000年代後半から現在まで、夥しい数のアニメを量産することが可能になりました。2000年代後半の爆発的なアニメ作品数の増大は、効率的な二値化&ペイントも大きな理由の1つでしょう。二値化の功績は計り知れないものがあります。

 

しかし、失った品質も表現も相応に大きかったのです。あっけらかんと割り切ったデザインの絵柄が増えたのも、もしかしたら、二値化で染まった描線の影響もあるかも知れません。描線のニュアンスが豊富じゃないと、様にならない絵も存在しますから、自然と二値化で様になる絵柄に傾いていった‥‥とも思えます。

 

 

もし可能なら、グレースケール(=諧調トレスのまま)で400dpiでスキャンした鉛筆画を、5KのiMacで「ドットバイドット」で見てください。描き手の勢いで描線が走っている原画のスキャンのほうが違いが解りやすいですが、とても綺麗な動画でも違いは見分けられます。「今までPCモニタやテレビで見てきたのは、随分と変わり果てた鉛筆線だったんだ」と愕然とするはずです。描き手の呼吸まで伝わるような詳細なニュアンスを実感すれば、「まだ鉛筆そのものは死んでない。生きている!」と嬉しくなるでしょう。

*ちなみに、27インチで2.5Kのモニタでドットバイドットでみても、鉛筆の凄さはわかりにくいです。27インチで5Kの「高詳細液晶パネル」で鉛筆画をみてこそ、繊細さと豪快さが同居する「真の鉛筆のチカラ」が解ります。

 

でも、現在のアニメ制作技法では、グレースケールで400dpiでスキャンした鉛筆画そのまま(=階調トレス)のニュアンスでフローするなんて、実質上無理ですよネ。そもそも諧調トレス工程の確保が難しいです。単価の問題も深刻でしょう。

 

 

 

とは言え‥‥。

 

鉛筆の死に悲しめど、描線の死に悲しまず。

 

描線のニュアンスを犠牲にして、猛烈な生産性を得ようとしていた時代に、鉛筆を使う人々は「自分らの管轄外の出来事」として、多くの人が「諧調トレス廃止、二値化トレス導入」の流れに対して関心や興味を示しませんでした。

 

諧調トレスの消滅が、鉛筆にとって何を意味するのか、具体的な技術的内容を理解できていなかったのかも知れません。しかし結果はどうであれ、鉛筆が鉛筆である大きな意義が失われるその時に、鉛筆をメインの道具として使う人々はあまりにも無関心過ぎたのは事実です。ペンタブでも代用がきく流れを、間接的とは言え許容したのです。

 

現在、鉛筆に期待される能力は、「二値化に最適なトレス線の入力装置」であって、鉛筆の表現力の幅など期待されてはいません。動画注意事項も、まさに二値化に合わせた内容に変化していますよネ。

 

 

現在、ペンタブが徐々に台頭し、鉛筆の存在が脅かされる不安を感じる人もいるでしょう。

 

その昔、トレスマシンにムラなく転写される(鉛筆のカーボンに反応する)鉛筆線が求められたように、現在は二値化&スムージングに最適な描線が求めらるのなら、鉛筆に限定する理由はなくペンタブでも可能です。不安は的中するかも知れません。

 

一方、現在はまだまだ鉛筆が主流でペンタブ作画など業界全体から見れば十数%程度だ‥‥という人もおりましょう。

 

しかし、現在の主流である「仕上げ以降がコンピュータプロセス」という技術運用スタイルだって、1996年当時は10%はおろか、数パーセントに過ぎませんでした。今が何パーセントだから云々‥‥なんていう論調は、何の未来予測にも繋がりません。世の中の色々なものが、昔は数パーセントの普及率だったことを思い出せば、現状のパーセントのままで未来を推し量ることはできません。

 

 

 

私は‥‥と言えば、現在Apple Pencil 100%です。しかし、二値化ではなく、諧調トレスです。2013年に諧調トレスにおける鉛筆の運用を断念しましたが、諧調トレスは全く諦めていないどころか、現在の私の主流ですらあります。4Kのキャンバスで威力を発揮する基礎技術として、諧調トレスは復活します。

 

例えば、Procreateは、描線の濃淡や細さ太さをダイナミックに表現できるだけでなく、テクスチャやムラが描写の動作に反応する様々な機能が盛り込まれています。ハード&ソフトの相乗効果によって、様々な描線の表現による作品が生み出されていくものと確信します。

 

 

もし、鉛筆が好きならば、「作画村」の中で祈り続けるのではなく、「作画村」を内包する「アニメ村」、さらに大きな「映像村」まで「作品における鉛筆の有用性」を強くアピールし、「たしかに鉛筆だと、作品が面白くなる」と皆に思わせる必要があるでしょう。「自分が好きだから」という理由だけでは、世界は動きません。

 

二値化トレスの入力装置に甘んじているだけでは、鉛筆は他に作業を奪われましょう。

 

鉛筆は作画のテリトリーだからと、近視眼的な作画限定の視野で捉えるのも、ジャッジミスを繰り返す原因となりましょう。

 

鉛筆が未来の映像技術で生き残るには、まさに「鉛筆だからこそできる」大きな何かが必要です。‥‥その「何か」は、鉛筆の強さを熟知する当人が見つけ出すほか、ないでしょう。

 

 

 


UHD雛形

AST〜アニメーション標準技術〜のUHD HDR仕様 After Effects プロジェクト雛形ファイルを昨日作成しました。今までは2K(HD)SDR時代の雛形をもとに4Kの雛形を作っていたので、色々と古い部分を残していましたが、新たにゼロから作り直しました。

 

下図は、そのスクリーンショットです。ゆえに寸法はUHDではなく、スクリーンショットの範囲選択の寸法です。

 

 

 

ハリウッドの実写のスレートとはおもむきの異なる「Cut」単位のカットボールドですが、そのへんは今までのアニメ制作の流儀を踏襲しています。

 

画面の1/4を占めるスケールバーは、まさにPQ1000運用への慎重な(あるいは恐怖への?)対応の表れです。192あたりのピークを常に目視でも監視しておきたい、PQ1000nitsならではの仕様となっています。おそらく、ちまたの多くの環境では、普通に247まで諧調が見えると思いますが(=PQカーブではないので)、PQカーブで1000nitsクリッピングならば、191あたりが白に見えるはずです。

 

何らかのカラープロファイルの齟齬で色がズレている場合は、RGB別のピークもズレてみえます。‥‥このあたりに、数ヶ月格闘してましたから、ボールドにも当然の心情として、スケールバーを入れたのです。実写のスレートにマクベスチャートを入れておきたいキモチに似ています。

 

何秒何コマというカウントは廃止し、ゼロスタートのTCと、1秒を1で数える小数点の表記です。単体のクリップなので、時間(H)は0スタートです。スクリーンショットは30秒の雛形なので、00:00:30:00の表記となっています。ファイナルクリップ(いわゆる本撮)以外はTCが小さく画面脇に刻印されるようにもなっています。DaVinciには便利な「Data Burn-In」機能がありますが、オフライン素材であることの目視にも役立ちますので、ファイナルクリップ以外はTCの焼き込みをおこなっています。

 

「コマ」だけでなく、単位の廃止は他にもあって、現実の「実寸」が存在しないので「ミリ」「センチ」という単位は消滅しました。「ooミリ/コマ」という昔ながらの引き指示も消滅しております。

 

コンポジションの情報からエクスプレッションにて色々と取得して表記に反映させるのはいつもの通りです。「anime」というのは架空の作品名です。

 

このAfter Effectsプロジェクトは、作品共通の標準仕様であり、「AST.1806」として標準化番号を付与しました。作品ごとに雛形を修正するのって、時間の無駄だと思っていましたから、ようやくAEPの標準化も本格化できそうです。

 

 

HDRの取り組みで痛感するのは、「SDRで作った、にわかHDR」はやはり「後付け感のするHDR」になりやすい‥‥ということです。sRGBやRec.709で作り終えた絵をHDRにしても、効果は限定的です。「どこかHDRっぽくできる部分はないか」的な後追い発想といいますか、「ピークを探してつまみあげる」アクションになりやすいわけです。

 

機材的な難問はありますが、できることなら最初から、生粋のHDRでアニメも作るべきでしょう。レイヤー構造の時点からHDRの1000nitsを意識する必要があります。

 

コントロールは、まるで2ストのモトクロッサーのようにピーキーですが、扱いなれるとピークをコントロールした絵作りが可能になり、めっちゃくちゃ楽しいです。

 

まあ、2018年現在は、得体の知れぬ4K HDR PQ 1000nitsのアニメの話をここで書いても独り相撲感が満杯なので、時が来るのを待とうと思います。

 

 


いきなり「Diesen Thread anzeigen」

ふとTwitterを見たら、

 

Diesen Thread anzeigen

 

とか書いてあって、日本語じゃなくなってます。

 

ドイツ語。なぜ? いつ変わった?

 

‥‥どこで治すんだろう。mobileのほうは普通に日本語なんですが。

 

調べてみると、

 

  1. Twitterアカウントにログインします。
  2. プロフィールアイコンをクリックし、ドロップダウンメニューから [設定とプライバシー] を選びます。
  3. ユーザー情報設定セクションで、[言語設定] ドロップダウンメニューから言語を選びます。

 

ですと。

 

アカウントを取っただけで全く使っていないので、もうアカウントもパスワードも忘れた。

 

「Vielleicht gefällt dir auch」‥‥‥‥‥まあ、いいか。

 


散財エアファイター【5】ラインアップに異変?

今やプラモデル界は、飛行機といえば零戦やBf109の繰り返し。往年のジェット機など無視されて久しい中、エアファイターコレクションは勇猛果敢なラインアップで楽しみにしております。

 

んが。

 

今後のラインアップをWebで確認したら、16号から先が真っ白。

 

 

 

しかも、しれっと、MIG-25が消えています。

 

トップページと食い違っております。

 

 

 

リストを見ると、第14号のはずのMIG-25が消えて、ミラージュ2000が繰り上がって、F-14のトムキャッターズ=塗装&マーキングのバリエーションが末尾に追加されています。

 

あれ。。。

 

もう、再編集回か。バリエーション展開か。

 

 

MIG-25、凄く楽しみにしてたのに。

 

 

ソビエト機、出せ〜〜〜。

 

エアファイターコレクションは、半分くらいは、ソビエト機のために買ってるんじゃー。

 

ミグ出せ〜、スホーイ出せ〜。ツポレフ〜‥‥は無理か。

 

 

でもまあ、気長に気楽に待ちます。これがないと仕事にならないわけじゃなし。

 

 


散財エアファイター【4】まとめて5機

家に帰ったらまとめて届いてました。

 

 

 

購読特典のF-4EJ、欠品だったフランカーとハリアー、最新のF/A-18EとA-10の、計5機です。

 

並べてみて、フランカーのひときわ大きいこと。大柄なA-10に負けていません。

 

 

 

A-10の1/100スケールは珍しいので(まあ、1/100スケール自体珍しいんですけどネ)、気になっている人は買いかも、です。

 

Amazonだとすぐにプレミア価格に高騰しますし。‥‥というか、既に3500円まで高騰。

 

 

 

エアファイターコレクションは、今後もどんどん珍機(というほどでもないが、1/100では珍しい)が発売されるので、ジェット機好きなら要チェックです。

 

 

今はめちゃ忙しいので、開梱して並べておしまい。

 

墨入れはまた今度の機会にまとめてやろうと思います。

 

 

 

追記:

 

今回の写真は、長らく使ってなかったNikonの防水デジカメ「S33」を使用しました。う〜ん、画質は良くないですネ。室内で光量不足というのもありますが、iPhoneのほうがもっと綺麗に撮れるように思います。コンデジと言えど生粋のカメラなのに、この程度の画質なのは、コンデジの存在意義の危うさを感じます。

 

でも、カメラへの愛着は消えません。コンデジのブレークスルーとなる製品をずっと待ってますヨ。

 

 


レイアウトに思う

レイアウトにおけるカメラの役割。それは最終的には観客の視野へ被写要素を伝達することですが、観「客」だからと言って、かならず客観的なカメラである必要もありません。観客が主人公の視点に没入した時には、主人公の主観にもなりましょう。

 

また、根本的なことですが、アニメは実写ではないので、レイアウトの思考を必ずしも「カメラ」想定で考える必要も、実はないのです。

 

さらにはパースや遠近法に頑なに縛られる必要もないです。絵は現実から解放された「絵だけの世界」を具現化できるユニークな表現方法です。パースを超越して、児童の戯画のようであっても、一向に構わないわけです。

 

しかし、アニメーション作品を具現化する上で、映画の文法や現実世界の成り立ちを、上手に活用することで、「映画としてのアニメ」「テレビドラマとしてのアニメ」を格段に作りやすくなります。作品の作風でも、絵と現実の境界線をどのくらいに設定するかも変わってきましょう。

 

 

どの場合でも、自分がレイアウト技法やパース技法を習得できていない未熟さを、都合よく「絵の世界」を持ち出して誤魔化すのは、なんともみっともないことです。絵の世界の自由な表現は、決して稚拙さの隠れ蓑・技術の偽装ではないです。

 

つまり、レイアウトの技法のあれこれを使いこなせるようになった上で、故意に配置のバランスを崩すことも可能ですし、パース技法を習得した上で、故意にパースを無視した絵をコントローラブルに描くことも可能になります。

 

ピカソのゲルニカは、ピカソがあれしか描けないわけじゃないのは、誰もが知っていることですよネ。デルヴォーが遠近法やパースを知らないから、奇妙に崩れて不思議な一点透視を描くわけではないです。

 

いわゆる、現在の標準・スタンダードの禁則を犯すには、相応の技術の裏付けと足場が必要というわけです。

 

 

 

もちろん、ルソーのような「天然気質」のケースもありましょう。しかし、ルソーは徹頭徹尾あの感じ、あのスタイルで一貫しておりブレがないですし、彼でしか生み出せない強烈な絵の世界があるので、唯一無比の存在として異彩を放つのです。ルソーの絵に対して、デッサンがおかしいとか、パースが変だとか言う人のほうが、「絵を一意的にしか評価できず、絵の世界の広がりをわかっていない」のです。

 

では、アニメの制作現場において、ルソーのような絵をいきなり描いてOKか? まあ、ほぼ100%、NGですよネ。制作している作品が、ルソーのソレを求めていない限りは。

 

アニメの現場のあらゆる工程のスタッフは、作品表現に由来する作業内容のオーダーありきです。ゆえに、多くの場合、レイアウトの標準技法をマスターしている必要がありますし、パースや遠近法を習得した上でレイアウト作業にとりかかる必然性があります。

 

アニメーターって(‥‥に限らず、美術さんも色彩設計さんもコンポジターも)、ものすごくスキルの高いことを求められていますよネ。どんなポリシーの、どんなスタイルの、どんな空間も、描いてみせろ! 作ってみせろ!‥‥と言われているようなものですから。

 

 

 

じゃあ、その高い技術力を習得し、作品の世界に合わせて縦横無尽に絵を描ける能力を身につけて、得られる報酬はいかほど?

 

はい。現在の現場の破綻構造へようこそ。一律単価制度の世界へようこそ‥‥ですネ。

 

未熟な人、下手な人は、安い金で良いんですよ。技術力相応のお値段で。‥‥未熟な時分から「ギャラが安い」とか言うのは、今まで大切に扱われすぎて寝ぼけてんのか?‥‥ということです。未熟なりの相応で良いのです。

 

でも、上手い人まで安い金のままだから、今の現場には夢も希望もモチベーションもないのです。どんなに上手くなっても、貧乏のままか‥‥という深刻重大な閉塞感。そんな中で何が当人の支えかといえば、「下手なのは嫌だ。上手い絵を描いていたい」という意地、プライド、心情だけ。

 

そうしたスタッフ個々の心情に覆いかぶさって猛烈に依存したまま、今の現場はこの先10年20年30年と続けていくんでしょうかね。

 

「お前はプロの絵を描けてない」「じゃあ、プロの絵が描けるようになったら、どのくらいのお金が貰えるんですか」「それはその‥‥だな‥‥」なんて、情けなさすぎちゃって‥‥‥。とても線の多い動画を1枚描きました。時給200円換算になりました。‥‥という現場で、少なくとも私は「プロ云々」の話を説得力をもって話すことはできません。

 

しかし、変動単価制度、社員雇用ならば、状況は変わってきましょう。すべて解決できるとは思いませんが、相当マシになると思います。プロ云々の話にも、相応の説得力が生じます。

 

 

 

とまあ、どんなに技術論を書いても、昔から現在に続くアニメ制作現場では、お金の話で行き詰まってしまいます。なので、ここで書くことは、あくまで新しい現場での話です。報酬の話を棚上げして、プロ意識だけ語ろうとしても、どうにもなりません。プロ意識とプロ報酬はセットで考えるのが、新しい現場の鉄則です。それは清書1枚に至るまで。

 

レイアウトに限らず、プロとして絵を作り出す、絵を動かす、映像を作る‥‥なんて仕事は「プレッシャーの塊」です。プレッシャーを跳ね返すのは、まさに当人の技術力、そして相応の報酬、ですわな。

 

 

 

 

 


デジカメの未来

デジカメ、いわゆるデジタルカメラの出荷台数はどんどん減少し今や、7〜10年前の1/5だそうです。

 

出荷台数は7年で5分の1に、デジカメ各社は撤退か新開拓か

https://newswitch.jp/p/13164

 

これは凄く納得。

 

だって、私も10年前くらいは、毎年のようにデジカメ(コンデジ)を買っていましたが、最近数年は全く買わなくなりましたし、たまにアマゾンで検索しても「欲しいものがない」ですもん。

 

これはデジカメの「製品としての魅力」が乏しくなったからです。「カメラをデジタルにすれば売れる」時代はもう完全に終わったわけです。

 

カメラメーカーさんには悪いのですが、消費者としての率直な感想です。

 

むしろ、今欲しいのはコレ。カメラメーカーではないBlackmagic社の「ポケットシネマカメラ4K」です。

 

 

撮影スペック:4K60p

ファイルフォーマット・コーデック:CinemaDNG RAW、CinemaDNG RAW 3:1、CinemaDNG RAW 4:1、ProRes 422 HQ QuickTime、ProRes 422 QuickTime、ProRes 422 LT QuickTime、ProRes 422 Proxy QuickTime

交換レンズフォーマット:マイクロフォーサーズ

 

 

スペックでカメラの性能が想像できるのなら、このカメラがいかに期待できるものか(期待=まだ発売前なので)、お判りでしょう。

 

こういうカメラがさ‥‥、カメラメーカーではなくBlackmagic社から、しかも15万円台で発売される状況を、カメラメーカーは対抗馬もなく指を咥えて傍観するに至る状況こそが、私がカメラメーカーから遠ざかっている大きな理由の1つです。

 

 

今、デジカメを買うに至る理由が見つかりません。未だに4K60pには対応できないコンデジ。恐ろしいほど高価な上級機種

 

iPhone7があれば4K30p、iPhone8以上なら4K60p、しかも新しいiPhoneXはスマートHDRまで搭載です。

 

なぜデジカメが売れないかって、解りきっていますよネ。

 

デジカメが「いらない」からです。

 

大した性能的アドバンテージをもたないコンデジを持ち歩いて手荷物を増やすくらいなら、最新のiPhoneに買い換えた方がマシなのですヨ。

 

わざわざカメラにお金を出す。持ち歩いて使う。‥‥そのためには、大きな理由が必要です。そして今の日本のカメラメーカーには、その大きな理由が決定的に欠けているのです。

 

 

しかし、私はカメラが今でも好きです。私がもしコンデジを買うとしたら、理由は簡潔です。

 

iPhoneと同じ撮影スペックを持ちつつ、レンズの性能が高い

 

‥‥これだけで、私は買いたいと思います。

 

やっぱりね‥‥、iPhoneのレンズはどうやったって、あのレンズ口径の性能を脱し得ないのです。しかも素人誤魔化しの「ウソ被写界深度」ですしネ。iPhone8 Plusを今使っていますが、「相変わらず、レンズはチープだな」と思います。

 

しかしiPhoneにはレンズのチープさを補ってあまる色々な要素で盛りだくさんです。4K60pは撮れるし、2Kで240fpsの撮影も可能、iCloudやAir Drop、Mail添付、Air Playで様々な共有も可能。

 

でも、そのiPhoneならでは利点が、実が最大の弱点でもあります。

 

昔のiPhone6 Plusは今やSIMカードを抜かれて「iPod」のようになっており、デジカメとしても使えます。しかし、デジカメとして持ち歩いて使おうとは全く思いません。ネットワークから切り離されたiPhoneはいきなり魅力を失うからです。使わなくなったiPhoneを屋外でスタンドアロンでカメラとして使うくらいなら、今使っているiPhoneで十分です。

 

ですから、カメラメーカーのコンデジが中途半端にネットワーク機能を有したところで、iPhoneには惨敗しますが、レンズの基本性能でiPhoneがどうしても追いつけない部分は圧勝できます。‥‥まあ、問題は、その「圧勝部分」が、一般の人にとっては、地味で魅力の乏しい点です。

 

手元にEOSしかないので、コンデジではないですが、iPhoneとデジカメの画質を比較してみましょう。

 

*2枚の写真とも、撮ってそのままの状態です。撮影後の補正は一切しておりません。

*後ろに写り込んでいるのは、作りかけの1/35のエレファント、ZoomのiPhone用マイクとウィンドウジャマー、iPhoneのグリップです。

 

一目瞭然。

 

いくらなんでも、iPhoneとEOSではアンフェアか。手元にコンデジがないので、スミマセン。

 

測光方式や色温度を抜きにしても、そりゃあまあ、レンズの口径が段違いなのですから、EOSの圧勝です。あえて、どちらがiPhoneで、どちらがEOSかなんて、書く必要もないくらいです。iPhoneのほう(一番目の写真)は、概して粗雑。明部から暗部へのグラデーションはザラザラ、ボケ味もザラザラ、トーンは不自然でノイジー、被写界深度のコクもへったくれもないです。

 

一方、EOSは、まずトーンが滑らか、ボケ味も滑らか。サプリの印刷ラベルの印字のカッチリ感も段違い、そらジローの毛並みの質感も繊維の毛羽立ちまで描写し、様々な部分が圧勝です。露出が多少アンダーな部分も、元のデータに余裕があるので補正でいくらでも「いい感じ」にできます。画像をクリックすると画像だけの表示なりますので、拡大して細部を見れば、そのあまりの品質の差に驚くでしょう。

 

*色温度を自動補正して、細部をほんの少しシャープにするだけで、より一層、端正な描写の写真になります。この「地味だけど細部のキレがある」画面はiPhoneでは難しいです。特に光量の乏しい場面では、モロに差が出ます。

 

iPhoneの描写感は、基本的に「QuickTake」の頃から変わってないよネ。iPhoneで撮った雰囲気のあるムービーがYouTubeでも見れますが、実はかなり「アングル」「レイアウト」が工夫されていて、iPhone内蔵カメラの弱点が目立たないようにしているのが解ります。何かとレンズ近くにものを配置してナメこむのは、iPhoneの被写界深度の欠点を補うレイアウトの工夫だよネ。

 

iPhone8で撮影した「ナメぼかし」のレイアウト。レンズのかなり近い位置にそらジローを置いてみました。こうすれば、被写界深度の深めなiPhoneでも「深度の浅い感じ」の画面を作れます。レイアウトの工夫がキモ‥‥というわけですネ。ちなみに色はPhotoshopで細部を調整しています。金属光沢をアオったりとか。つまり、見せ方で工夫しないと、基本性能の低さがバレるわけです。拡大して見れば、相変わらずの粗雑なボケ味。

 

でもねえ‥‥カメラ基本性能の大きな差があっても、皆はもう、カメラを単体では中々買わんのよねえ‥‥。iPhoneをはじめとしたスマホのカメラ機能で済ませています。私だってそうだし。‥‥実際、アプリでイジれば、雰囲気のある画面はiPhoneの写真でも作れますしネ。

 

つまり、カメラメーカーが誇りに感じている部分と、購買層が魅力として感じている部分に、ものすごい断層ができているんじゃないですかネ。

 

カメラメーカーが、「カメラの性能、ここにあり!」とアピールするのなら、相当なiPhoneとのカメラ性能の格差が必要です。それはレンズであり撮像素子であり、記録フォーマットであり、操作性です。

 

少なくとも私なら、

 

  • iPhoneや従来コンデジと同等の小ささ、薄さ(バッグに気軽に入れられる)
  • 絞りやシャッター速度を即座に操作で変えられる(ボケ味や残像を自在にコントロール)
  • iPhoneより描写性能の高いレンズと撮像素子(カメラメーカーの製品を買う意味・意義)
  • 4K60pHDRの動画撮影機能(iPhoneと同等かそれ以上のムービー機能)
  • バッテリー容量と効率の改善(バッテリー周りの悩み解消)

 

‥‥のような性能がコンデジに欲しいです。そして、

 

  • 4KHDRテレビで見て良し
  • iPadやiPhoneに転送して見て良し
  • パソコンのモニタで見て良し

 

‥‥の画質を誇ることで、

 

やっぱりカメラだけのことはあるわあ。綺麗に撮れて良かったね。

 

‥‥と思いたいです。特に子供さんがいる家庭や、四足歩行の同居生物がいる人は、写る絵や映像の「ツヤ」が違ってきます。

 

 

とはいえ、今、特にコンデジに言えるのは、

 

愛好家にも訴えかけず

一般層にも訴えかけない

 

‥‥のような中途半端な性能の状態が続いていることです。

 

だから、私も買わないし、実家の父母もデジカメなんて全然使わなくなったし、デジカメを持ち歩いている人もほとんど見なくなったのでしょう。

 

デジカメの失速は、iPhoneをはじめとしたスマホの台頭と決して無縁ではないでしょうネ。明らかにスマホ普及の打撃を被ってますよネ。ほとんどの人がスマホで写真を撮るようになりました。

 

2020年代の4KHDRのテレビが各世帯に普及した時に、デジカメはどれだけ「その状況を活かせる」でしょうか。「前例がない」とばかりにカメラメーカーが安全牌路線を採る中で、再びスマホに先手を取られて後塵を拝するのでしょうか。

 

長年のカメラ愛好家として、日本のカメラメーカーの普及価格帯製品に、今後も期待し続けます。

 

 

 

 

 

 


悟るだけではどうにもならぬ

悟るだけなら、ぶっちゃけ、生きてれば誰でもできます。悟りを蓄積して、自分の能力が高まったと誤認することもありましょう。いわゆる「その場に居合わせただけで、できる気分になった」という「耳年増」の典型です。

 

要は、悟りを蓄積した後に、「理」のフェイズに進み、自ら実践して再構築・体系化に取り組まなければ、悟りは悟りでしかなく、自身の能力向上にはほとんど結びつかない‥‥と、最近は熟思います。

 

誰かが実践している様子を見て、自分もできるようになったと錯覚するのは、何とも愚かしいものです。他人が毎日何枚何十枚も絵を描いて苦闘している様子を見て、「なるほど、絵を毎日描いて格闘するとはこういうものか」と悟ったところで、当人の画力は全く向上していません。

 

悟るだけではどうにもなりません。むしろ、悟ったと思うことで思考や分析力が固定化され、以前の自分より劣化していくことだってあり得ましょう。

 

昔の哲学者たちが、ある意味、悟りに対して攻撃的になったのも、なるほど、今では頷けます。

 

以上のことから、「理解」という言葉は相当重いです。簡単に「理解」なんていう言葉は使えないです。‥‥まあ、口をついてポンと出がちな言葉ではありますけどネ。

 

感性、悟性、理性。‥‥若い20代ならともかく、40代以降になったのなら、その3つの性質は毎日噛み締めて生きて行きたいと思います。

 

 


レイアウトシステム

アニメ制作工程における「レイアウト」は、私が思うに、先人たちの大いなる知恵です。絵はどう描いたって絵ですが、いきなり細部を描き始めて描き終えた後で画面構成が不味いことに気づくのは、単なる時間の浪費=お金の無駄遣いだからです。「レイアウト」で画面構成、平面構成を見極めたのちに、細部に取り掛かれば、とても効率的に目標とする絵の状態へと導くことができます。

 

‥‥というか、美術の時間に「まず全体を捉えてから、徐々に細部を描写していきましょう」と美術の先生に指導された通りのことなんですけどネ。美術の先生がどれだけ悟性と理性を踏まえた上で指導しているかは先生のクオリティ次第ですが、指導内容にはちゃんと内包されています。

 

現在の「レイアウト+第1原画」を一度に作業するやりかたは、レイアウト=全体の構成や要素の配置の可否を問う前に、原画のラフを描いてタイムシートまでつけてしまいますから、「全体を見極める前に細部を描き込んでしまう典型」です。

 

時間の有無はもはや関係なく、どんなに時間がたっぷりあろうと、「レイアウト+第1原画」のやりかたが定着してしまった今、「レイアウトの本質は形骸化」したも同じです。原画の若手・新人が「レイアウトを学ぶ」機会も喪失しているのではないでしょうかネ。

 

 

レイアウトは「配置」です。画面の中の要素配置。‥‥とてもシンプルです。

 

「レイアウト 意味」の語句でWebで検索すれば、

 

  • 配置。配列。
  • 所定の範囲内に効果的に配置すること
  • 何をどこにどのように配置(割り付け)するかということ

 

‥‥と、いくらでも「配置すること」の意が検索にヒットします。

 

なので、背景の詳細な線画である必要はないですし、ましてやキャラクターの原画の下書きであろうはずがないです。

 

しかし、現状として、レイアウトは背景原図として綿密に細部まで描いて、セル部分は清書さえすれば完成原画になるように全てラフ原画を描いてシートまで書くのが「現在の現場の正義」ということになれば、レイアウトシステムの本来の意義を唱えたところで掻き消されましょう。

 

なので私は、今の現場ではおとなしく「今の流儀」に従って作業しています。今の現場の未来を決めるのは、今の現場のキーマンたちなので、その人たちが「レイアウト+背景原図+第1原画+タイムシート」の同時作業で良いと思っているのなら、それならそれで、私があれこれ意見するのも僭越でしょうしネ。

 

 

私は未来の新しい現場で「レイアウト」の本意を実践するのみです。旧来の現場には何も言わんです。

 

新しい現場は新しい方法論もどんどん導入しますが、一方で「温故知新」を実践する場でもあります。どんなに古くても、良いものはどんどん復古して導入すれば良いですからネ。

 

「レイアウト工程」は何よりもまず、「レイアウトを決めて、監督演出チェック」です。その後で、必要に応じて「背景原図清書」があったり、「ラフモーション」(ラフ原画、第1原画に似たような内容です)の工程に進みます。

 

まずはレイアウト、画面の構成、画面要素の配置を見極めるわけです。

 

  • 各要素が織りなすアウトラインはシーンのリズムや量感やニュアンスを体現しているか
  • カメラ(=観客の視界)の寄り引き、カメラの動きや移動は、演出意図と合致しているか
  • 主要素(=多くの場合、キャラです)の配置は、止まった時だけでなく、動いて変化していく際にも、意図通りに成立しているか
  • 線だけでなく、明暗のレイアウト、色彩のレイアウトを想定して構成できているか
  • 上記を踏まえた上で、必要な物理法則(パースペクティブ・遠近法など)を主観的に操作できているか

 

レイアウトシステムが本来為すべきことを、ノイズや過装飾なしに、上述の内容を純粋に実践するのが、私らの考える「古くて新しい、レイアウト作業工程」です。

 

 

でもまあ、制作現場には個々の事情や状況がありましょう。「何が正しい」ということもないです。

 

レイアウトに第1原画をくっつけたのだって、どこかの誰かさんたちがやり始めて、「これはいい」と思った他者・他社が真似して、現在に至っているわけですから、それぞれの利点と欠点を認識して、自分たちの目標点に向かって運用・運営していくだけのこと‥‥でしょう。

 

今の20代・30代前半の若い人は、レイアウトの意味もわからず、第1原画の付随物としか認識していないかも知れません。でもそれも、他者がどうこういうことでもなく、当人が気付くべきことです。気づかないまま業界を去るのも人生。そのまま何となく惰性で作業して歳食うのも人生。このままじゃアカンと一念発起するのも人生ですもんネ。

 

 

 


Blackmagic RAW

実写において、低価格で高品質な機材を提供するBlackmagic社。実は私、アニメでもBlackmagicのソリューションを活用できないか、密かに(と言ってここで書いてるあたり)機会を伺っているのですが、Blackmagicからまた新たなエポックが発表されました。

 

Blackmagic RAWです。Blackmagic社のカメラや編集ソフト(DaVinci Resolve)が目指す、次世代基準の映像制作にふさわしい、新しい映像ファイル形式のようです。

 

 

 

今のところは実質的に、BlackmagicのカメラとDaVinciでの運用に限られているっぽいです。ただし、クロスプラットフォーム、SDKの無償配布など、自社製品に限定する感じではなさそうです。

 

 

あまり4K HDRの話題にはふれないつもりですが、ちょっとだけ。

 

PQ1000nitsの映像制作において、もはや8bitは使い物にはなりません。トーンジャンプが簡単に発生してしまいます。最低でも10bit、できれば12bitが好ましいです。

 

ゆえに、ProRes4444コーデックの有用性は言うに及ばず、今さらではありますが、再びTIFF連番に戻って運用してもやむなしと考えています。TIFFと言っても、もちろん16bitのTIFFですヨ。

 

新時代のアニメ制作に呼応できる、新時代のコーデック、ファイルフォーマットを欲しているのです。最初から4〜8K HDR/PQ 24〜120fpsを想定したファイルフォーマットの登場を待っています。どんなに1000nitsを活用した美しい映像を作っても、データに記録できずに綺麗に再生できないのでは何にもならないからです。

 

 

Blackmagic RAWの細かい仕様はわかりませんし、今のところ、After Effectsなどの私のメインのソフトウェアには対応していませんが、もしDaVinciでキャッシュファイル的にでも使えるのなら、フローの中で試してみたいところです。

 

 

 



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