リセットした後に

ここ数回、作画の効率化の是非について色々と書いたのを自分なりに振り返りつつ、一方で、なぜ新しい技術基盤によるアニメ制作技法やシステムに(自分ながら)ここまで執着すのるかを考えてみると、未来社会の映像フォーマットでアニメ作品を作り続けたいと欲するのと同時に、今までの制作システムのしがらみの「全てをリセット」した新しい方式で再出発しいと考えるから‥‥です。

 

新しいアニメの制作システムにおいては、同じアニメ作品を作る者同士で、50円100円のことで「骨肉の争い」をしたくないわけです。

 

実際、動画の単価を、他の工程から引っこ抜いて50〜100円高くしたところで、作画の作業費の問題は全く解決しないと断言できます。今のシステムに乗る以上、同じ状況が繰り返されるだけです。「いやいや。そんなちゃぶ台をひっくり返すような事をしなくても、小さなことからコツコツと。」と言うのかも知れませんが、実際、小さなことしかできずにその先は打ち止めなのが、みんな「見えないふりをしているだけで」、実は見えすぎるくらいに見えているんじゃないでしょうか。

 

作画は細かく描いて大変になった‥‥というのは、あくまで作画目線だけの話。髪の毛に3色塗り分け(影をプラスして合計6色〜ブラーでグラデにする)が必要なキャラは、作画のエスカレートで直接的にペイント作業や撮影処理に負荷をかけています。また、撮影の「テクスチャ貼り」をキャラデザインの時点から要求し、モブで何体もテクスチャを貼り付けなければならない上に、さらに動き回る‥‥というのも、作画の影響による他部署への過負荷です。

 

何かの影響で何かに負荷がかかった‥‥なんていう話は、アニメ業界においては、「あんたこそ」「お前の方が」なんていう、まさに「身内の骨肉の争い」に発展しかねない問題です。作画のスケジュールの話まで持ち出したら、感情的な雑言の応酬になって決裂してしまうほど、危ない争いです。

 

私は作画出身者ですし、今でも作画作業はします。そして、ほとほと、作画の現場の「お金の事情」は厳しいと思います。

 

だからと言って、どこかの部署のお金をカットして、作画に回して、とりあえずお金の問題を少しだけでも改善できる‥‥だなんて、全く思えません。単にお金のない現場の中で貧乏のハンカチ落としがまた繰り返されただけです。遺恨の種こそ生まれこそすれ、全体的な解決には全く及ばないです。

 

原画の単価が数百円上がっても、動画の単価が数十円上がっても、今までのやり方では、どうにもならない‥‥と、みんなもう、とっくの昔に気がついていますよネ。

 

なのに、単価の話を延々としてても、何も進展しないじゃないですか。いつか、どこかの大富豪が業界にお金をバラ撒いてくれて、皆に沢山のお金が転がり込む‥‥とでも思っているのならまだしも。

 

要は、単価の上げ下げ視点で未来の業界の話をしている時点で、全く未来を展望できていないのです。

 

現行の単価がどうしたこうしたの話ではなく、アニメ制作におけるお金の有り様を根本から変える、技術の革新が必要だと私は思うのです。何度考えても、そこに行き着きます。単価の話に終始するばかりでは、過去から未来へ続くお金の問題は永遠に解決しません。

 

 

お金で人は荒みます。「今月、ちょっと金欠気味〜」なんてヘラヘラしているのは、まだ崩壊しない余裕があるからです。電気も水道も止まり、家賃を滞納していつ追い出されるかわからないような状態に陥った時、世の中のすべてのものが呪わしく思えるものです。私は今から25年くらい前に、絵を描けば描くほど、そんな状態に落ちてしまいましたが、コンピュータを自分の新たな道具にして、紙と鉛筆の作画だけでなく、様々な映像関連の仕事をするようになって、それまでとは違う道が開けてきたのです。

 

私は作画の新しい道を開くために、コンピュータ作画の技術基盤を地道に積んでいく所存ですが、未来のアニメーターはアニメーター専業ではなく、「ジョブシフト」(=タイムシフトに引っ掛けて、私が勝手に作った造語です)をすべきだとも考えています。

 

コンピュータ作画の他に、コンセプトアート、カラースクリプト、モーションスクリプト、ストラクチャ(舞台セットの作成)など、作画だけでなく様々な作業を請け負うことで、報酬の手立てを多様にするのです。加えて、少人数を効率良くジョブをシフトすることにより、人海戦術地獄から抜け出し、「16ピースカットだったピザを、4ピースカットにして」分け前を増やす‥‥というわけです。前にも書きましたが、L寸のピザを16人で分ければ、そりゃあ、ひもじい思いもしますからネ。

 

また、まるで自分がアホみたいに「作業入れを待ち続ける」ことを防ぐ構造も作りたいのです。待機時間はただ単に時間と金の無駄ですもんネ。

 

各作業の「村の中だけ」でなく、様々な作業を実際に請け負うことで、アニメ制作全般の工程におけるスケジュールの感覚を身につけ、さらにまた、「先に何をしておけば、どのような表現が可能か」を実感しつつ作業に活かしたり、「どの工程を改善すれば、作品制作にとって有益か」を思考できるようにもなります。

 

現在は、「単価で買われる作業」という意識が根付き過ぎてしまって、何がどのように作用するとアニメの映像が出来上がるか‥‥を実感できない作業者が多いと思います。ゆえに、特に作画はスケジュールがダレがちになります。

 

でも例えば、私のように、作画とコンポジット(撮影)をジョブシフトすれば、作業の「頭と尻」がものすご〜〜〜く実感できます。春に一人で原画を描いた短編のWOBでは、「最後の最後のケツがわかっているから、原画作業のデッド(時間的限界)がわかり」、キリキリと自分自身をヒートアップできたのです。

 

 

 

要は、現代社会の中で、技術職としての自身を確立して、ちゃんとお金を稼いで(稼げて)、持ち家の1つでも持てる職業に、アニメ制作を変えたいわけです。そのためには、旧来の殻からも、作業ムラからも、未練を絶ち旅立って、新しいフィールドでアニメ制作を再発明する必要があります。

 

そのためには、業界団体をあてにしている場合ではなく、自分らが動きだす必要があります。

 

同じ意思を持つ人々だけでいいから、少人数でもいいから、まずは最初の一歩を、一緒に頑張っていきたいと、私は思います。


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