段階的移行の往く先

私がこのブログで、4Kの話題を取り上げるたびに、現在の現場を「旧来」と呼び表し、バッサリと区切ったような物言いをするのは、「段階的移行はあり得ない」ことを強調・明示するためです。既にもう、何年も前からです。

 

その辺について、快く思わない人もいるんだろうな‥‥と覚悟して書いてます。

 

嫌われたり、疎まれたりするのを恐れていては、新しい何かなんて、できないですもん。今までの予定調和を壊すところから、新しい何かは始まるのですから。

 

「良い人に思われたくて」、耳障りの良い言葉で「心配することはないですよ。今までだって、乗り越えてきたんです。4Kにも段階的に慣れていきますよ。みんな仲良く頑張りましょう。」なんて絶対に書くわけにはいきませんし、軽はずみな楽観論による過ちも犯したくありません。大した実感も考察もなしに、今この時間を当たり障りなく過ごすためだけに、「大丈夫だよ」「なんとかなるよ」と誤魔化すことが、本当に善きことなのか‥‥、疑問に思います。

 

4Kに段階的に移行する‥‥ということは、うやむやのうちに4Kに対応させられ、大した報酬アップもない‥‥ということです。

 

この10年を振り返ってみましょう。

 

段階的に、より一層複雑なキャラを描かされるようになって、髪の毛に6色も使ってセレクトブラーするようになり、「デジタル作画」を従来の作業費で運用し‥‥と、「言われるがまま、段階的に、要求を呑み続けた歴史」だったのではないですかネ。

 

たしかに作業費は、多少は上がりました。しかし、そのお金の上げ幅よりも格段に、作業内容は厳しくなっている‥‥のを、少なくとも作画スタッフの誰もが実感しているでしょう。

 

‥‥で、そんな調子で、2020年代になったら、どうなるでしょうか。

 

「4Kの高詳細画面を『活用』して、『絵師』のイラストや『原作漫画』のディテールそのままに、作画してほしい」と要求されるだけです。相変わらず、作画枚数は数千数万、今とあまり変わらない単価で、今以上に時間のかかる重い作業を続ける状況が、容易に目に浮かびます。

 

「漫画家」「絵師」‥‥すなわち、色々なメディアの「静止画イラスト」を描く人々は、アニメの技術的な内面を(当然ながら)知り得ないし、数千数万作画して動かすことも全く考慮せずにイラストを描くわけです。もちろん「漫画家」「絵師」さんは「そんなの想定外」だと思いますが、「原作のアニメ変換処理工場」と化した現場は、「どこかから」要求されるままに、どんどん複雑な線画と彩色・撮影処理に追い込まれているのが実情です。アニメ現場サイドのアニメーター兼業キャラクターデザイナーが線を減らそうにも、「減らさせてくれない」事例も多いでしょう。

 

そうした「現場が辿る未来」を考慮した時、少なくとも私は、今までの現場が4K時代へ段階的に移行できるとは、口が裂けても言えません。‥‥絶対に言わない。‥‥言いたくもない。仮に、外見からは移行できたように見えても、内部はとんでもないことになると思います。

 

極端に厳しくなった高詳細の作業で、たとえ単価が2倍になったからって、それで生きていける? 4K時代の4K寸法に合わせた作業内容と負担は2倍どころじゃ済まないでしょう。

 

4Kは、地デジ2Kへの移行の時とは、あまりにも内容が違い過ぎます。‥‥その違いに、アニメ現場で作業する当事者たちが気づかないのであれば、容易に「段階的移行」に丸め込まれるでしょう。そして、「昔より作業が辛くなった」と何十年も同じことを言い続けるのです。

 

私もかつて「どんどん作業が辛くなる」と言いながらも、旧来現場で作業していました。ゆえに、状況をいつか断ち切って仕切り直すために、かれこれ10年以上前から、別の道と方法を探し始めたのです。

 

技術が全く別物に入れ替わり、作業慣習の連続性が途絶えるからこそ、完全な仕切り直しも可能になります。

 

技術的にも、作業システム的にも、全て新しくなるからこそ、過去現在の現場の忌まわしい「内容無視の一律単価制度」を廃止できるのです。

 

4K60pHDRを活用する新しいアニメーション技術を推進していますが、今までの現場の技術とは全く別物です。ともすれば「業界離反」のニュアンスがこのブログの文体から匂ってしまうのは、新しいアニメーション技術においては、業界の「原動仕背撮」のインフラはもはや全然役に立たないがゆえ‥‥です。業界に属する個々の人間の才能は新しい技術でいくらでも活用できますが、業界自慢の「超高速作業」のインフラは、全く違う技術やシステムのメカニズムをもつ現場では役に立ちません。

 

新しい技術体系を構築することは困難の連続ですが、「過去からの因縁を物理的に断ち切れる」状態は、それだけで希望となり得ます。

 

 

 

旧来アニメ現場が、4Kに何らかの方法をもって対応するのなら、その際は、「段階的移行」ではなく「完全仕切り直し」の「新規」の取り組みが必要‥‥でしょうが、それは当事者たちが采配して全体を導くしかないです。

 

ある人は「アニメで4Kなんて考えていない。今のままで良い。」と言っていましたが、それは正しい判断かも知れません。

 

現在のアニメ現場視点で言えば、2K24pSDRで作り続ければ、少なくとも、今より劇的に状況が悪化することはないでしょう。

 

一方で、その「劇的には悪化しない状況」が、10年後、20年後に持続するか‥‥も、等しく、判断を要するとは思います。

 

 

 

 


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