人の数

少ない人数で制作できる利点が、現場に劇的な変化をもたらすことは、実はあまり認識されていません。でもまあ、認識できなくても当然かとも思っていて、人は実際に体験しないと納得しない生き物ですから、何かしらの「似た経験」「既視感」がなければ、想像と体験を重ね合わせるのは難しいのでしょう。

 

前回、機材の話をちょっと書きましたが、必要十分な機材に100万かかったとしても、その数が4セットで済めば、400万円です。

 

スペックは、

 

iMac Proのミドルクラスをとりあえず32GBメモリで=40〜60万くらいかな?(価格未発表なので予測で)

iPad Pro 12.9インチとApple Pencil=14万くらい

APCかオムロンの無停電装置=500Wクラスで3〜4万くらい

SSD2つとHDD2つをそれぞれソフトウェアRAID用に=10万くらい

Thunderboltの箱=10万くらいで何とか

サブモニタが必要な場合は、安めの2.5Kで3〜4万円くらい

 

計:80〜100万円くらい

 

‥‥と、この他に、机と椅子、ソフトウェア(まあ、Adobe CCですネ)が必要になります。

 

一方、大人数の現場では、多少性能は低くても、数が揃えられる機材でまかないます。CPUはi5だったり、メモリの搭載量も16GBくらいだったりします。

 

「デジタル作画モデル」と呼ばれるマシンで見積って、最低限のセットで揃えると、

 

マシン本体(i5で16GBメモリ)=8万円

2Kディスプレイ=4万円(EIZOあたりの廉価モデル)

板タブレット=3万円

 

計:15万円くらい

 

‥‥のように20万円を切りますが、これは最低ラインを割った機材レベルです。買い替え時期がすぐに来るので、ぶっちゃけ、見積もっても意味がありません。無駄金になります。もしこれで6年保たせろ(作業し続けろ)というリーダーがいたら、その現場からは離れた方が良いです。今、作業できて乗り切れば良い、最低限の出費で人材や機材を使いたい‥‥というのが、まさに機材のチョイスに「言わなくても表れている」からです。

 

普通に使える構成ですと、言うほどそんなに安くはなりません。i7で32GB、そこそこのグラフィックス性能を持ち、液タブも接続して‥‥で試算していくと、

 

マシン本体(i7で32GBメモリ)=18万くらい

2.5KのEIZOあたりのモニタ=8万円くらい

液タブ=13万円くらい

 

計:39万円くらい

 

‥‥と、無停電装置とバックアップシステムを割愛しても、40万近くまで金額が嵩みます。ちなみに、この装備ですと、4Kなどの未来映像フォーマットの作業は苦しいですが、現状の2Kでは普通に作業が可能でしょう。

 

この40万の機材で、例えば「デジタル作画ベース」で作業した場合、何百何千何万の枚数を描くために、二桁規模の人員が必要になります。ペンタブでも紙でも、膨大な枚数を描くための「旧来現場の人海戦術」の様相は、程度の差こそあれ、昔から変えようがありません。

 

例えば仮に、40万x10人で、400万円です。

 

機材の予算的には、互角のように思えますが、作品の作業内容や現場の設備状況や待遇は、大きく異なります。

 

新しい技術ベースで作業する4人は、4K60pに完全対応した作業環境で、高効率な生産水準と、高品質な映像品質を実現できます。旧来の作画技術の全てを網羅することはできないものの、逆に、今まで不可能だったアニメーション表現が可能になり、新技術の長所を活かした作品表現で、未来の映像技術と共に制作していくことになるでしょう。

 

一方、旧来からの作画技術をベースにした10人は、豊富に蓄積したセル&フィルム時代からの技法を駆使して、まさに日本のアニメの真骨頂を体現する作品を作ることができるでしょう。しかし、絵の密度の限界は2K、フレームレートは24fps止まりとなり、未来の技術展開に限界があり、アップコンで未来に対応することになるでしょう。

 

作品表現では、数十年に渡る技術蓄積で、旧来現場の方が有利なようにも思えます。しかし、現場運用面で考えた場合、旧来現場には弱みが付き纏います。

 

人数を多くしてしまうと継続雇用のコスト、そして機材の維持運用費(電気代も込み)とメンテナンス費用が、どんどん加算されていきます。

 

イニシャルコストでは互角なように見えても、人を増やして現場を作る昔からの考えかたでは、その後がキツい‥‥のです。

 

つまり、人数をむやみに増やすということは、あらゆる方面で重荷を背負った未来が待ち構えている‥‥ということです。

 

リスクヘッジ、リスクマネージメントを考えるのなら、人数が少ない高効率で技術水準の高い現場を計画し実現するしか、日本の現場の生きる道は厳しい‥‥と思っています。人件費(ちゃんと労働基準を考えるのなら)は高いし、土地は高いし、機材だって高いし、高いことだらけの日本です。

 

要するに、少数で作業完結できる現場を作ると、

 

十分な性能の機材を揃えられる

電気代・冷房費用などの運用維持費を低く抑えられる

管理の手間を軽減できる

 

そして、決定的なのは、

 

各作業者の報酬を高く設定できる

 

‥‥と、パッと考えただけで、アニメ業界がずっと悩まされてきた問題を大幅に改善できます。

 

その反面、

 

現場の人間にはおしなべて高水準のスキルが必須

管理システムなどの現代的なインフラ整備が前提

 

‥‥という、かっちりとした「現場品質基準」が必要になります。

 

今までの「憧れだけでアニメをやりたい人」や「ぐずぐずの現場管理」という悪癖は一掃しなければなりません。作業者にも制作管理にも現場の意識にも、高水準が必要です。

 

ちなみに、次世代技術による少人数制の効率は、上述で4人:10人で例えて、控えめな数字にしています。実際は、もっと高い効率ですが、ここでその数字を書くと色々な誤解も生じそうなので、今は曖昧にしておきます。

 

 

 

現場に人がたくさん増えるのは、その産業が栄える象徴のようにも思えます。しかし、場当たり的で短期決戦的思考によって、必要以上の人数が増えるのだとしたら、それは繁栄どころか、崩壊の兆しのように思えます。

 

 

人を野放図に増やして、そのあと、どう養っていくの?

 

間に合わせの安普請の機材をたくさん購入して、そのあと、どう運用するの?

 

 

現場の運用を「昔からこうだから、仕方ない」で済ませるのは、もうそろそろ私らの代(40〜50代)で終わらせて良いと思うんですよネ。

 

まあ、なので、私は新しい技術による新しい現場を作るために、色々とやっているのです。

 

 


関連する記事

calendar

S M T W T F S
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930  
<< November 2017 >>

selected entries

categories

archives

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM