プラス要素、付加価値、エコシステム

ごく普通に考えて、同じクオリティの製品なら、昔と同じ値段で買いたいですよネ。自分の身になって考えればわかることです。

 

例えば、ここ10年ほどのアニメ業界は、A4〜B4を150dpi前後で、1秒24コマ2〜3コマ打ちの動き、つまり内部的に1.5〜2Kの8〜12fpsで映像を作っています。

*撮影時には24fpsに丸められます。

 

納品時には2K24pになりますが、その2K24pの作品・商品の価格がいきなり数倍に跳ね上がったら、その商品の受け取られかたや競争力って、どうなるでしょうか。買い手側は、数倍の価格になった価値をどこに見出せば良いのでしょうか。

 

もし2K24pのままで、以前より高い価値を買う側に訴えかけるには、何かしらの付加価値が必要不可欠です。

 

それは制作する会社のブランドイメージであったり、2K24pでもフルモーション&高詳細でとても丁寧に作られていたりとか、とにかく、何かしらの付加価値が必要です。

 

そうでなければ、「なぜ、価格がこんなに高くなったんだ?」と怪訝に思うでしょう。

 

「いや。制作現場の苦境を救うために、今までの異常な価格は訂正したい。」と言ったところで、業界を救うために、業界外の人々が無批判・無条件にお金を多く支払うことなんて、普通に考えて、あり得るわけがないです。品質は以前と変わらないのに、無謀な価格引き上げをおこなおうものなら、単に「顧客」離れを引き起こすだけです。

 

ちゃんと、作品・商品に、「これなら、数倍のお金を支払っても然るべき」と思わせるプラス要素がなければ、お金なんて簡単に増額されるわけがないのです。お金を出す側が、どんなに資金力をもっていても、旧来と同じクオリティのプロダクトに、無条件にお金を増やして支払うわけがありません。

 

要するに、1.5K8fpsの2K24pアップコンの技術価格相場は、もう完全にフィックスしてしまった‥‥と考えておいた方が良いでしょう。1.5Kなり2Kなりで、2コマ3コマ作画を続ける限り、技術の相場が大きく向上することはないのです。

 

 

旧来制作現場については、このへんで。

 

これからは新しい技術関連について、文字数を割きたく思います。

 

 

私はアニメーションの技術屋なので、明確に「アニメの技術=お金=ビジネス」という切っても切り離せない相関関係を常に意識しています。

 

「技術の価格」を意識せずして、ビジネスは成り立ちません。

 

「自分はこんな絵が描ける」というのも技術ではありますが、ここで書きたいのは個人ごとの能力ではなく、制作集団の有する技術の全体像です。

 

計画進行を着々と進めている新しいアニメーション技術においては、いよいよ、4K60fpsが標準仕様となりました。よほどのことがない限り、2K24fpsでは制作しません。4K60p、もしくは4K48pが標準です。

 

なぜかというと、どうせ苦労して作るのなら、2Kや24pでマスターを作るのは「もったいないこと、この上ない」からです。UHDの品質が実現できる技術を有するのに、わざわざ2Kで24pの寝ぼけた解像感にして、何の得があるの?‥‥という話です。

 

多くの枚数=数千数万の絵を描くために、絵をできるだけ簡略化したり、動かす枚数を制限するのは、もはや過去のことです。絵を簡略化して動きを節約したら、4K60pは隙間だらけで持て余しがハンパないです。

 

4K60pは、新しい絵作り、映像作りにこそ、活きてきます。

 

「旧来では非常識とさえ言われるほどの細密な絵」「滑らかな60pフルモーション」「4Kの情報量を活かした密度感のある作品空間表現」「今まで実現不可能と思われていた作風の絵を整然と動かす」「アップコンではなく、正真正銘4K60pの精緻な映像」などの、新しいプラス要素を何層にも用意しています。

 

今までのアニメ技術の作風を模倣・継承しても、付加価値やプラス要素はほとんどアピールできません。今までできなかったことを実現するから、「品質の違い=価格の違い」を感じ取ってもらえるのです。

 

 

絵を動かしてアニメーション映像として完成させるには、とにもかくにも、技術を有した人間たちが必要です。そこは全く誤魔化さずに主張すべき基本原理です。

 

ですから、技術を持った人間たちの働き方が、制作技術の価格算出の出発点となります。私は1分あたりのコストに対し、数十万から数百万までのスケーリングを考えていますが、それは旧来の人海戦術スタイルではなく少人数工房スタイルで、ワークグループネットワークありきで算出されます。

 

お金のことはあまりここでは書けませんが、新しい技術に関わる人間たちには、然るべき新しい生活基盤が必要です。過去のアニメ業界の因習はシャットアウトしなければなりません。「20時間、作業貫徹すれば何とか間に合う」なんていう生活ありきで、どうして、新時代の基盤が形成できましょうか。

 

要は「エコシステム」、新しい「生態系」です。

 

旧来アニメ現場の労働の軸上に、決して新しいエコシステムは作られるべきではないと、強く決心しています。

 

新しいアニメーション技術は、新しいエコシステムで育まれるのです。

 

4K60pのアニメーション技術がある日ポコっと生まれ出て成長するわけではなく、「制作の生態系」を新たに形作ることによって、結果物として付加価値・プラス要素の豊富な完成物を作り出すことができるのです。

 

ただ、言葉をもう少し慎重に選ぶとすると、4K60pや8K120pなどの高品質映像技術をネイティブに活用する新しいアニメーション技術は、「付加」「プラス」なんていう後付け的なニュアンスの要素ではありません。決して大袈裟な表現ではなく、本質的に、「アニメーション産業革命」と呼ぶにふさわしいものだと、私は確信しています。

 

新しい価値基準を、新しい技術で形作っていく。

 

‥‥まあ、我ながら、技術屋風情の私が発想しそうなことではありますが、そこはかとない強い確信があるのは、正直なキモチなのです。

 

 


関連する記事

calendar

S M T W T F S
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930  
<< November 2017 >>

selected entries

categories

archives

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM